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13話 ページ14

無駄に広く入り組んだ施設の中をスタスタと足早に歩きながら私はうーんと頭を捻り考え込んでいた。

【今日の夜、メンテナンスルームで待ってるから】

去り際に近くにいた國神くんにすら聞こえない小さな声で私を真っ直ぐ見据えて豹馬が言った言葉だ。

どういう意図があるのかさっぱり分からない。メンテナンスルームだから何処か調整が悪いのかな?でも練習中の様子を見るにそんな素振りはなかったんだけどな…

「おい、なに呆けている。」

「え、あぁ…」

つい考え込んでいるうちに甚八の元へ到着していたらしくやれやれと言わんばかりのジト目でため息を吐かれた。

「2次選考へ進むチームがもう一棟決まった。」

「え、今日の試合もう終わったの?確か今日確定する棟は……、っ!」

甚八がひらりと渡してきた2次選考へ進む選手達の名簿を受け取ると思わず見慣れた名前に固まった。

別に大して驚く事じゃないのは分かっている。彼の事だから絶対に勝ち進んで来るとは思ってたけど…

「お前があからさまにそいつの事を避けているのは知っている。今までは人数がかなり多かった分仕事が多いのもあって黙認していたが…。お前が青い監獄のマネージャーである限り、もうこれ以上逃げる事はできないぞ。」

「…………分かってる。」

ぽつりと呟くように言うと、不安と焦りや暗い感情が入り混じったような空気に息苦しさを感じて私はくるりと踵を返して部屋を出た。

いやだ。思い出したくない、会いたくない。

部屋を出てどれくらい歩いただろうか。ドクドクと嫌な音を立てて早くなる心臓の音が頭の中で響いてめまいがする。

「はっ……はぁ………」

思わず壁にもたれかかってしゃがみこむと更に鼓動の音が頭に響き冷や汗が額を伝うと共に息苦しさが込み上げ、目の前にある床がぐにゃりと歪んでいく。

「はぁ……はぁ……」

「へぁ?A??そんなとこに座ってどうしたの?……A?」

この声は…

「はっ……はぁ……な、ぎ……?」

「っ!…大丈夫…じゃないよね。とりあえずメンテナンスルームに行くから、ちょっとごめんね。」

凪はうーんと少し困ったように首を傾げた後、そっと私を抱き上げた。

「嫌かもしれないけど、ちょっとだけ我慢して。」

凪の焦っていて、でも私を落ち着けようとしてくれているのか穏やかな声色と体温にぐちゃぐちゃになっていた思考が少し落ち着くのを感じながら私はそこで意識を手放した。

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めめ(プロフ) - 楽しく読ませていただいています!誰が喋っているのか吹き出し前に付けていただけるとよりわかりやすくて読みやすいなと感じました。更新楽しみにしています(^^) (2022年11月24日 0時) (レス) @page16 id: 046701b798 (このIDを非表示/違反報告)
翠恋(プロフ) - ころりんさん» 夢主ちゃんは凪の事は苗字呼びだから名前呼びしてないです。だから凪は誠志郎って呼んでほしいっていう意味で言っています (2022年11月21日 0時) (レス) id: d41fc0cc07 (このIDを非表示/違反報告)
ころりん - 4話の名前について話してるくだり、もう名前で呼んでるのに名前で呼んで欲しいってどういうことですか? (2022年11月18日 21時) (レス) @page5 id: d13e34f292 (このIDを非表示/違反報告)
機関車トーリマス - 面白いです!最高です!続き待ってます! (2022年11月8日 5時) (レス) @page14 id: b3f1cd4664 (このIDを非表示/違反報告)
オタなーん - 面白いです! (2022年10月26日 15時) (レス) @page7 id: e0d32b81e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:翠恋 | 作成日時:2022年10月2日 23時

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