雨模様につき、【稲荷崎】

◎ 友だち ページ9

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「今日の男の子って誰？」



母さんと一緒に洗濯物をたたんでいると 突然 母さんがそう聞いてきた。あの後興味津々な目で見られていたから 問いただされるだろうなぁとは思ってたけど。

ん"ん"ッと咳払いをして平静を装う。



「とっ、友だちや。宮治って言うねん」



あかん、声がひっくり返ってもた。

ハンカチを何度もたたみ直しながら母さんの反応を待った。なんで今日に限ってこんなに聞いてくるんだろ。普段は学校生活とか聞かないタイプなのに。



「ほんま？彼氏とかじゃないん？」

「そんなんちゃうわ！！」

「えー…あんなかっこいい子がAとおってくれたらなぁ」

「かっ、かっこいいかは分からんけど…うちのプリン美味しいって言うてくれてん」

「ほーん。やからいつにも増してプリン作りに精を出してると」

「やからそんなんちゃうって！！」



うちが叫ぶと母さんは そんなムキにならんでも、とくすくす笑った。


母さんがつけたテレビからは、また稲荷崎の虹の特集をやっていた。何となくで見ていると、母さんは「不思議なこともあるんやねぇ」と呟いた。それは うちの友だち事情についてか。

洗濯物を箪笥(たんす)に直しに行こうと立ち上がると、母さんが微笑を浮かべながら口を開いた。



「その友だち、また紹介してな」

「…おん」



冷蔵庫の中を覗くと、さっき作っていたプリンもいい具合に固まってきたようで。四つ並んだプリンに お願いします、と小さな願掛けをした。


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