雨模様につき、【稲荷崎】

○ 笑顔 ページ12

．


「…うんまッ！！」

「ほんまや…」

「せやろー」

「なんで治が言うの」



パァっと効果音がつきそうな表情で褒めてくれる四人。お世辞でもこれは嬉しい。

顔がにやけてしまいそうで必死に真顔を保とうとすると 宮侑に笑われてしまった。「表情死んどるで！」だって。仮にも女子に対して言う言葉か。



「Aって料理できるの？」

「…いや。料理は壊滅的。お菓子は得意やねんけど…なぜかカレーが作られへん」

「うそやん！！俺でもカレーは作れるで！」

「悔しいけど侑(ツム)の作るカレーは おかんよりうまい」

「あー、侑って家庭科だけ5やもんな」

「それは言わん約束やで 銀！」



なんだか宮侑に負けたってだけで気に触る。もうちょっと練習してみようかな。


ミートボールをつ着きながら そんなことを考えていると、銀くんが「ごちそうさま」と うちの顔をのぞき込みながら言った。…宮や角名の笑顔は昨日見たけど、銀くんはこれが初かも。何気に嬉しい。



「あれ、銀 プリン食べるの早くない？」

「ほんまや！いっつも飯食うの俺らの中で一番遅いのに」

「うまいもんはすぐ無くなってまうねん」

「…銀のおかんに言うといたろ」

「やめろ！！」



おお、嬉しい。もしかしたら 銀くんに嫌われてるかもっていうのも うちの考えすぎかもしれん。そうやったらいいけど。



「お粗末さまです〜」



銀くんの顔を見ながらそう言うと、カシャッ！という音がした。



「Aのレアな笑顔ゲット〜」

「見せろ角名」

「送れ角名」

「ちょ、ちょっと！銀くん固まっとんねんけど！」

「銀島結、死亡のお知らせ」

「直視はさすがになぁ」

「意味わからへん！」



母さん、この人ら変です。紹介しろって言われたけどいつになるかわかりません。


でも、こういうわちゃわちゃとした雰囲気も悪くないな、と思いながら笑みをこぼした。


．

◎ 水底は寂しい→←◎ にぎやか

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す