短編2 (ページ6)

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久しぶりに見た元同級生のAちゃんが虚ろな目をして歩いていて、咄嗟に腕を掴んでしまった。

彼女を家まで連れていく。特に駄目と言われたり抵抗されなかったのでそのまま部屋にあげる

あの頃の元気な明るい笑顔が見れなくなっていて、俺は酷く焦っていた

ペットボトルの水を渡すも手をつけずAちゃんはぼーっと遠くを見つめている

「Aちゃん、なんかあった？」

訪れた沈黙。何も話さない気だろうか……。いや、なにも話せないのだとしたら？今の彼女は気力というのもが無いように見えた

正面から距離を詰めて頭に手のひらをそっと乗せる。嫌がる素振りがないので優しく撫でてみる

するとAちゃんが口を開いた

「あのね、私は駄目なんだって」

無気力に呟かれた言葉

「そんなことないよ。でも、どうしてそう思ったのかって……聞かせてくれたりするかな？」

そこから俺は彼女から夫の不倫があったこと、義両親と夫からの暴言やプレッシャー、両親に頼る術が無いことを聞いた。俺は部外者だが、腸が煮えくり返るような心地だった

彼女の心は壊されてしまったのではないか？目の前に居る彼女は以前よりも痩せていた。最低な夫と義両親、無関心な両親に苛つく

空間に少し静寂が流れてから俺はAちゃんの手を取り、移動させベットに座らせる。彼女は何も言わなかった。

そして、出来るだけ苦しくないようにゆっくりとベットに押し倒す

彼女は抵抗しなかった

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あれから日が経って、メッセージにAちゃんから妊娠の報告があった

日数計算的に夫との間の子では無いらしく、向こうから離婚を言い渡されたらしい。アイツ自身は不倫をしていたし丁度良かったのだろう

彼女からこの子を産んでもいいかと連絡が来る。一度話を聞いただけの俺に許可を得ようとするのには心当たりがあった

"俺との子なの？"

送信すると肯定の言葉が返ってくる

その場で彼女に電話を掛け、結婚して一緒に育てようと申し出る。すると電話口から鼻をすするような音が聞こえて「いいの？この子の家族になってくれるの？」と言われる

「三人で家族になろう」

その後、元夫は自分の不倫がバレるのが怖かったのか
不貞を理由にAを訴えることはしなかった。

「ありがとう、だいちくん」

彼女に明るい笑顔が戻っていた