短編2 (ページ25)

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言葉 🌸 ページ25

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中学校時代
毎年冬休みに書き初めの課題があり、休み明けに提出するとクラスで金賞銀賞銅賞が与えられ、その中でも良いと評価されたものは地区のコンクールに送られることがあった

当時教室の後ろに全員分の書き初めが貼られており、その中の私の書き初めに金の印がペタリと貼られていた

それは友達もいない、勉強も運動も出来ないダメダメな私のちょっとした出来事であった。周りのクラスメイトからすれば習字の宿題なんて大したことじゃないかもしれないけれど、私にとっては嬉しいことだった

その時に先生から呼び出されて、ビクビクしながら職員室に行ったのも鮮明に覚えている。そこで聞かせられた話は書き初めをコンクールに出してみないかというものだった

私はコンクールに自分の習字が提出されるのが恥ずかしかったが、どうしても断れなかった。断った時に先生からどう思われるのかが分からなくて怖くて、大丈夫ですと言ってしまったのだった

自分の意見も言えない己に対して、自己嫌悪に陥りながら教室に戻りゆっくりと扉を開けるとそこにクラスメイトが一人残っていた

私はそそくさと帰りの支度をしていると、そのクラスメイトが何かをじっと見つめていることに気付く。彼は教室の後ろに貼りだされている書き初めを見ていた

「字、綺麗だね」

彼が突然こちらを向いたので警戒できておらず、目がバッチリと合った状態で言われてしまった

私は背中に嫌な冷や汗をかいた。何か言わないと、何か言わないと……と思い、言葉を口に出す

「……ぁ、ありがとうございます」

真下を向きながら伝えるも、思ったように声を出せなかった。こんな小さな声、彼に届いているのだろうか

私の声が届いているのか心配な気持ちと、逆に届かないで欲しいという相反する気持ちでいっぱいになった

彼が「うん。じゃあね」と言って教室から出ていく

私はその場でへたりこんでしまった。教室の床は冷たくて、放課後の学校は酷く静かだった

彼の言葉は、私が依存して縋り付くには充分だった