短編2 (ページ11)

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羽はあるのに 👑 ページ11

👑

籠の中の鳥は、いつしか飛び方を忘れてしまった

「A起きたの？おはよう。」

鎖がじゃらりと音を鳴らし、枷が外されると足首にある痕が露呈する。枷がない時は歩いて外へ行けるのに、そうしないのは何故だろう

おはようと声を掛けた人間の手ずから食事を摂る。その二人の様子は傍から見たら飼い主とペットだった

それからしばらく時間が経って、部屋の温度が少し下がる。おそらく日が沈んだのだろう。最後にお日様を拝んだのはいつだったか

ぽつりぽつりと小さく唄を口ずさむ

ここに来て最初の頃は何もかもに怯えながら過ごしていた。出される食事は何が入っているのか分からなくて怖くて手をつけずにいたら、あの人の手から直接食事を食べさせられるようになった

それからしばらく経ってからあの人の気まぐれなのか、私を試しているのか……朝に私が起きたら足にある枷を外すようになった

私がここから逃げ出したら何をされるのだろう。殺される？それともそのまま逃がしてくれる？

ぼやぼやとした思考を繰り返していく内に"このままここで一生を終えるのかな"と考える。そしてあの人の顔が脳裏に浮かぶ。いつも何を考えているのか分からない微笑みを浮かべて、優しい声色で話しかけてくるあの人

でも、私が外に出たとして、ここにいるよりも幸せになれるのだろうか？あの人は私を幽閉しているけど、暴力を振るってきたりしない。一日三食食べれるし、温かい部屋を用意してくれて、お話もしてくれる

ここから抜け出して社会に出た時に支障無く働けるのか、私には分からなかった

ここから出て不幸になるくらいなら、私は一生籠の中の鳥で良い

私は両膝をぐっと抱え込み目を瞑った

鳥籠の扉は開けてあるのに、鳥は外へと羽ばたかなかった