短編3 (ページ11)

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ドロドロ 🐈 ページ11

🐈

私の恋心というものは、さらっとしていて真っ直ぐなものだと思っていました。しかし、そこに居たのはドロドロとした黒いもので、私は酷く困惑したのです。あぁ、これが私の恋心であるのかと。私はこの怪物を胸の内に飼っていたのかと。"こんな醜い私を、あなたは見ないで"そんな我儘を抱えて歩いた。

「おはよう、A」

そう言うあなたを、誰にも見られない場所に閉じ込めてしまいたかった。くるずは優しくて、人との関わりを大切にする人だから。良い人だからこそ、周りに人が集(たか)るでしょ。甘い密のような優しいあなたを誰もにあげたくない、そんな私の醜い独占欲がドロドロと溢れ出した。

「おはようくるず。よく眠れた？」

私はドロドロとしたものが外に溢れ出るのを塞ぐように、自分の右手で己の右の頬をさらっと撫でた。こんなの、気休めにもならない。

「うん。そう言うAは？ちゃんと寝てる？」

あなたが私の瞳を覗き込むようにして体勢を傾ける。そんな姿が可愛らしくて、私の瞳の奥の真っ黒な執念を見て欲しくなくて、思わず笑いそうになるのを必死に堪えた。

「うーん……実は、これ誰にも言ってないんだけど、最近寝付きが悪くて」

私がそう言えば、くるずは心配そうに眉を顰めた。

「そうなの？大丈夫、？じゃないか……」

彼が何か考えているので、私はじっとしながら彼の顔を見つめる。静かに、それでいて甘美な空間に穏やかな時間が流れる。このまま時が止まったなら、なんて嬉しいのだろうか。あなたをこの私の網膜に焼き付けることが出来たのなら、私の心は満たされるのだろうか

彼が口を開く。その挙動、一挙手一投足全てを見逃したくなくてずっと見つめる

「あ、今日の夜って空いてたりする？」

「今日の夜……えっと、深夜は空いてるよ」

ほんとはウソ。夜に予定なんて無いけど、ワザと嘘をつく。またドロドロとしたものが内から外に出ていきそうで、私は意味もなく右耳のピアスを触る。

「そっか。そしたら、Aが時間ある時に通話掛けてもいい？お話ししながらなら……眠れないかな？」

願ってもない提案にすぐさま乗りたくなる気持ちを必死に抑える。その成果もあってか、私の口元には綺麗な笑みだけが溢れた

「いいの？そしたらお願いしたいな。ありがとう、くるず」

このドロドロの恋心は誰にも悟られない。私だけのものにしなくちゃ

時計が深夜を指す頃に、何をお話しようかな