拾伍 ページ15
「まさかバレてるとはねぇ…」
「よりによって御館様かよォ」
御館様からの司令で、私たちは近場にある隣町に鬼を狩りに来ていた。
ついでに付き合ってる事も見透かされた。
食べ物や西洋の衣類が栄えていて、人通りも多い。
「まぁ仕方ないよ。広められる心配もないし」
「そうかァ?多分やりそうだけどなァ」
「…まぁ、広めていない事を祈ろう」
目撃情報があったのは、夜の商店街だった。普通いないと思いがちだが、1時になれば商店街の街灯以外の明かりは全て消えるという。
「怖いねぇ」
「俺が居るから心配すんなァ」
「頼もしい彼氏さんでよかった」
私たちは鬼殺隊専用の服屋に入り、それぞれの服に着替えた。
「あっ、着替えるの早いね」
店の外に出ると、着物姿の実弥くんが店の壁にもたれかかっていた。
「…似合ってんなァ」
「ほんと?実弥くんもかっこいいよ」
「…行くぞォ」
「あ、照れてるー」
「…うるせェ」
私たちは商店街の中を通り、偵察兼観光をしていた。
その時、
「A!!!」
聞きたくもなかった声の後、私の手首が掴まれた。
振り向いてみると、案の定「それ」だった。
「…どなたですか?離してください」
「A!!あの時は俺が悪かった!!もう一度、家族をやり直さないか??」
「おィ」
ドスの効いた低い声を出した実弥くんによって、それの手が私の手首から剥ぎ取られた。
「私に家族なんていません。鬼に食べられました。義理の父親なんて言う人もいません。では」
「A!!待て!!待てよぉぉぉぉ!!!」
私はそれの言葉を無視して、実弥くんの手を引いて見つからなそうな店の中へ駆け込んだ。
「いらっしゃいませ、空いている席へどうぞ」
店員さんに誘導され、人の少ない端の席へ座った。
「ご注文はどうされますか?」
「ラムネを二人分、お願いします」
「かしこまりました」
店員さんが店の裏へと行くと、実弥くんはふぅ、と息を吐いた。
「…んで、あいつはなんだァ」
「…まぁ、そうなるよね」
いつかは話すかと思ってたけど。
「あの人は、私が11の時に亡くなった父親の代わりに父親になった人。まぁ、私は父親なんて1回も思ってもいなかったけど」
「…そうかァ」
理由を追求しない彼は、私の事を考えてくれているんだろう。
店員さんがラムネを持ってきたのをきっかけに、私のご飯についての話題に変更になった。
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作者名:すいへ | 作成日時:2021年8月17日 22時