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拾参 ページ13

「…へ」


「好きでもねェ女の名前なんて呼ばねェよ。好きでもねェ女に肩なんか貸さねェよ」


俺は、想いを全てぶつける勢いで言った。


「お前なァ、全部可愛すぎるんだよォ。羊羹頬張ってる顔も、鬼を狩る真剣な目も、たまに見せる恥ずかしそうな仕草も。全部が可愛いんだよォ。俺の心臓毎回大きな脈打ちっぱなしなんだよォ。」


Aの顔が段々赤く染ってきた。


「お前の事が好きじゃないなんていつ言ったかァ?魅力が無いなんていつ言ったかァ?そんな事言えるわけねぇだろォ。お前は俺の好きな女なんだからなァ?好きな女に嫌味言うやつなんていねェだろ」


「えっ、あの」


「俺が好きつったら好きなんだよォ。どんなに自己肯定感が低くても、どんなに天然でも、俺はそれを全部含めてお前の事がすき」


「まって」


Aはいつの間にか泣いていた。


「ちょっと、まって」


「待ってんだろォ」


どうやら正気を取り戻したのか、顔は林檎のように赤く染まり、涙は止まっていない。


「うそ、じゃない?」


「どう考えても俺が好きなのはお前しかいねェよ」


彼女はまた顔を赤くして、涙を頬に伝わらせた。


そんな姿を見てる俺も体があつくなり、自然と頬が緩んだ。


「…実弥、くん」


「なんだァ」


「…大好きです」


「…俺も」


彼は突然、何故かもどかしそうに、目を泳がした。


「…どしたの?」


「…ぜってェに言わねェ」


「えーなんで!!」


「…くそォ」


頭を抱えた彼の様子をしっかりこの目で見てみる。


「…実弥くん、したいことあるでしょ」


「…」


「今なら私何されても大丈夫だよ?ほらほらぁ、今のうちにやっておかないとぉ」


彼を煽ってみた。案の定睨まれた


けど、



ちゅ



私のおでこに、柔らかい彼の唇が優しく当たった。


「…やったぞォ」


「…………完敗です」


恥ずかしすぎて、顔に手を当てた。

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作者名:すいへ | 作成日時:2021年8月17日 22時

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