弐 ページ2
｢美味しいねぇ｣
｢そうだなァ｣
彼はおはぎを頬張り、私は緑茶を啜りながら羊羹を口に運んでいる。
こんなほっとする時間が至福だったり、幸せだったり。
とくに、彼といる時間は楽しかったり。
彼は私の知らない柱達のことを話してくれる。だから、随分聞き入ってしまい、この前なんて気がつけば夕方だった。
｢あら、Aさんと不死川さんじゃないですか｣
横を向けば、しのぶちゃんと蜜璃ちゃんがにこやかな様子で並んで立っていた。うん、かわいい。
｢ん！しのぶちゃんに蜜璃ちゃん！｣
｢…｣
いつものように蜜璃ちゃんに｢可愛いわ！！｣と言われ、軽く否定した。
｢お二人はどうして此処に？｣
｢定食屋さんでたまたま会ってさ。そのまま甘味処まで直行してきたの！｣
｢へぇ〜、そうなんですねぇ｣
｢…行くぞォ｣
｢へ？｣
席を立ち上がった不死川くんを急いで追いかけながらも、勘定をして二人に手を振った。
｢不死川くん！｣
｢…あァ、わりィ｣
｢どうしたの？急に行こうって…｣
すると、彼は私から顔を背けた。
｢いやァ、なんでもねェよォ｣
｢…？｣
｢今日はありがとうなァ｣
そう言い残し、彼は自分の屋敷に帰ってしまった。
｢…｣
胸の奥がきゅっと握りしめられるような感覚が、私を襲った。
もう少しだけ、一緒にいたかったな
｢…｣
━━━━━━━━━━━━━━━
私、朝霧Aは恋をしている。
柱の中で最も恐れられている、不死川実弥に。
怖いけど、本当は優しくて、時々可愛くて、それでもかっこよくて。
でも、叶わないと知っている。
選ばれるはずがないとわかっている。
だから
ただあなたの背中を押すだけ
それだけの役割で大丈夫だから
そばにいさせてください。
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作者名：すいへ | 作成日時：2021年8月17日 22時
