【BTS】性別不詳のソロアイドル (ページ32)

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『ほ、ホソギヒョン、どうしてここに？ていうか、他の皆さんは…？』
『俺だけだよ。トイレ行ったついでに顔出そうかなって。…ちょっと落ち込んでたみたいだしね？』

そう言ってホソクさんは私の頭に手を置き、控えめに撫でてくれる。

…気付いてたんだ、彼は。私がつまづいた事も、それを気にしている事も。

『でもきっと、相当ちゃんと見てないと気付けなかったよ。俺たち角度的にもよく見える位置だったし。でもメンバーは誰も気付いてなかった。』
『……気付かれるとかじゃ、ないんです。ミスをした事実が嫌で…。』
『ヤー、ミスなんか誰だってあるよ？俺もあるし、ジョングクだってある。完璧な人なんて居ないんだから…』
『っダメなんです、完璧じゃなきゃ…！』

咄嗟にホソクさんの言葉を遮る。彼は一瞬驚いた顔をするも、すぐまた優しい表情に戻り『どうして？』と尋ねた。

『…自分は…MWは、完璧じゃなきゃいけないんです。そうじゃなきゃ、みんな離れてしまう。』
『……どうしてそう思うの？』
『…ファンは…MW'sのみんなは…ミステリアスで、男でも女でもなくて、完璧なMWが好きなんです。…自分ではなく、今まで作り上げてきた「MW」という存在が。』

途切れ途切れに、少しずつ呟く。ホソクさんは何も言わずに聞いてくれた。

『…1つでも欠けてしまえば、それは「MW」じゃない。みんなが好いてくれる「MW」で無くなってしまったら…MW'sのみんなが、MWを愛してくれなくなったら…MWから、離れてしまったら…自分は…っ』

上手く言葉が出せなくなり、静かに俯く。
ホソクさんはそんな私を見て、私の頭に置いていた手を背中に回し、優しく抱きしめてくれた。

言いたい事がぐちゃぐちゃになって、涙が込み上げてくる。必死に堪えていると、その事にホソクさんが気付いたのか、背中に回した手でトントンと叩き始めた。

『……今だけは、「MW」の事を忘れてもいいんじゃない？』
「！……ホソ、クさ…っ、ぅ、」
『だから、ホソギヒョンだってば。』

彼はそう言ってフッと笑うと、反対の手で私の頭を撫でてくれた。
私が泣きじゃくっている間も『大丈夫』『頑張ったね』と、ずっと優しい言葉をかけてくれた。

メイク崩れちゃうなぁとか、衣装濡れちゃうな、汚れちゃうなとか、色々な事が頭をよぎったけれど、私はただひたすらホソギヒョンの胸で泣いた。

兄がいたら、こんな感じなのかな…なんて、私には烏滸がましいな。