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控え室に戻ると、扉を開けた途端マネージャーが飛び込んできた。
「っわ、」
「MW〜!今回もかっこよかった!また成長したのね〜!」
「…マネージャー…ありがとうございます。」
小さく笑ってマネージャーを抱きしめ返す。
他の人には上手く映っていたんだ。良かった。
それでも、ミスしたことには変わりないし、その事実は無くならない。
私はマネージャーから離れて、少しの間1人にして欲しいと告げる。マネージャーは察してくれたのか「そんな気にする事じゃないわ。30分で直してよね。」と、その場にいた数人のスタッフを連れて部屋を後にした。
少し広めの控え室に、1人ぽつんと立ち尽くす。
今回のミスは、終盤少しつまづいた事。上手く誤魔化せたのは及第点と言ったところだけど…ミスはミスだ。大も小もない。
こればっかりは改善点も何も、気を付けるしかないのだけど…だからと言って「仕方ない」で片付けるのも納得いかない。
…ステージの情景や空気、緊張感を思い出す。
ミスをしたポイントの少し前から、ステップを踏み少しずつ踊り出す。
ここの動きを少し軽めにして、次に余裕を出そうか…いや、それでは迫力が足りない。なら、振付師さんには悪いけど少しアレンジを加えて…
何度も試行錯誤して、同じミスを起こさない為にはどうするのが最適か。何が効率よく、かつパフォーマンスのレベルを落とさず改善できるか。
何度も、何度も何度も考え直す。
でも私は所詮、元が「ダンスの経験者」程度であって、長年やってきたプロのダンサーでも、才能に恵まれたダンスの天才でもない。
最適解なんて、一向に浮かばなかった。
そんな時。
『…さん……MWさん?』
「?!あ、わっ」
『!わ、危な…!』
誰もいないはずなのにいきなり声をかけられ、現実に引き戻される。
その際にバランスを崩してしまい受け身を取ろうとしたら、恐らく声の主である誰かに受け止められた。
顔を上げると、そこには…
「……ホソク、さん…?」
『…ホソギヒョン、でしょ?ごめんね、驚かせるつもりは無かったんだけど…。』
『怪我はない?』と優しく微笑む、ホソクさんの姿があった。
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作者名:りいた | 作成日時:2021年9月15日 12時