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翌日
番組の収録を着々と進め、ついにその時が。
「〜とここで、謎多きアイドルMWさんへの質問コーナー!」
「いぇーい。答えられるといいんですが。」
「いつもの事務所NGがね!」
司会の人がガハハと笑う。笑い事じゃねえわこちとら。窮屈でしゃーない。
「んじゃまず本名、年齢、出身、そして性別。こちらは毎度恒例の〜?」
「事務所NGです。」
「ありがとうございます!」
ぶっ飛ばすぞ
じゃなかった、そういう振り方だからね。仕方ないね。司会は悪くない。
「お、これ初めてだね。身長体重!」
「あ、これは許可出ました。169cmの55kgです。」
「おお〜、男にしちゃ低いし、女にしちゃでかいし…相変わらず性別は謎だねぇ。」
「んはは、謎多きアイドルですから。」
お〜さすが!なんて言われるけど、何が流石なのかわからん。これだからテレビは難しい。
「他に許可出たのは?」
「苦手なものです。そうですね例えば…実は野菜が苦手です。主に根菜。」
「へぇ!意外!MWさんめっちゃベジタリアンぽいのに。」
「はは、よく言われます。中でも人参は特に…敵ですね。」
「敵!!」
司会さんが手を叩いて笑う。人参は人類の敵だよ。人って字入ってるし。
その後も順調に進み、番組の締めの挨拶となった時。
「では最後に…ゲストさんからテレビの前の皆さんに向けて、飛びっきりの愛嬌をお願いします!」
「あ、愛嬌…ですか?」
聞いてないが。
突然の無茶振りに数秒固まってしまったが、自分は一応アイドルだ。愛嬌も時にはしなければならない。これもMW'sのため、金のため…。
「はい、せーの!」
「…むぅ〜うっ!」
精一杯の高い声で、頭の上で指曲げピースをしてウインクまでした。
個人的に愛嬌としては完璧だと思うが、かなりメンタルがやられてしまいそのまま顔を覆う。
「かわいい〜!!いやぁ、さすがアイドル!!僕も思わずキュンとしちゃいました!!」
「う…すみません、こういうの初めてで…。」
「初めてにしては良かったよ〜!これはTwitterのトレンド間違いなしだ!」
司会の人はガハハと笑って「では、また来週〜!」と番組を締めた。
これから愛嬌の機会が増えなきゃいいな…。
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作者名:りいた | 作成日時:2021年9月15日 12時