ハンター試験 ページ17
新たに出された課題はゆで卵だった。
「会長、私達をあの山まで連れていってくれませんか」
「なるほど。もちろん、いいとも」
飛行船に揺られること数十分、到着したのがマフタツ山の頂上。長い河川で二分された巨大な岩山だ。
受験生達は亀裂から谷を覗き込むが、深すぎて底が目視できない。
試験内容は、この渓谷に丈夫な糸で吊るされているクモワシの卵を採って、壁を伝って戻ってくること。つまりはバンジージャンプとロッククライミングである。ただし、落ちたら数十km先の海までノンストップだ。
「この卵でゆで卵を作るのよ」
メンチは約束通りクモワシの卵を採ってきて見せた。
『楽しそう!ゆで卵って美味しいのかな?』
「あーよかった」
「こーゆーのを待ってたんだよね」
「走るのやら民族料理より、よっぽど早くてわかりやすいぜ!」
怯える255番とは正反対に、ゴンやキルアは安堵の声をあげた。そして一部の受験生を残し、フユト達は嬉々として谷間へ飛び込んだ。
.
受験生が持ち帰ったクモワシの卵は大鍋に入れて茹でるのだが、茹で加減のことでひと悶着起きていた。
「お前ゆで卵知らねぇの?」
『まあ……知らなくて悪いか!』
「ふーん…」
『なに…』
「なんも」
「A早く食べないとなくなってしまうぞ」
『あっ、それは嫌!』
パクッ
『おいひぃー!』
「A、美味しそうに食べるね」
ゴンが言った。
初めて食べる味、Aは幸せそうに頬を押さえていた。
『これキルアも食べてみなよ、これ半熟?らしいから、そっち固茹でだっけ』
「え、お前、それ口付け……」
『はいっ!』
「そういうの、ちょっと待っムグッ」
Aは半熟卵を無理やりキルアの口に押し付けた。
『キルアのもいただき!』
パクッ
『どっちも美味しぃ』
「(1口ちっさ)」
フードで顔が見えなくても笑っているのがわかるぐらいに満面の笑みのA。
「お前なぁ」
クモワシの卵を頬張るAの姿を見ていると、怒る気すら失せてしまう。
自分だけが気にしているのが恥ずかしくって、背を向けたキルアは耳まで真っ赤になっていた。
「……バカ」
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作者名:あんみつ | 作成日時:2022年7月18日 17時