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あの時の神ちゃんは、見ている方が辛かった。
俺がみんなに向き合っている状況だったから、きっとみんなは見えていない。
それをわかっていたのか、無意識なのか、仮面を被らず感情を出している神ちゃん。
神ちゃんには悪いけど、俺は嬉しくなった。
いつも隠している感情を、思わず出してしまったということは、相当な何かを抱えている。
俺には想像のできないものだろうし、できるとは思っていない。
ずっと一緒だったのに、気持ちを察せない自分に腹が立つ。
「めっちゃええやん!」
とか、みんな褒めてくれる中、神ちゃんだけは、ぐっと何かをこらえるような表情だった。
次は神ちゃんの曲!
どんな感じ?
興味津々なメンバーに一言、
「内緒ー!」
なんて、神ちゃんらしくない。
いや、元気さはきっと神ちゃん”らしい”んやろうけど。
ダーク系、そう言った神ちゃん
きっと、今の自分の気持ちだろう。
くまが濃いのは寝れてない証拠で、少し痩せたような体は、心身ともに疲れている証拠。
長年一緒にやってきたんやから、わからんはずないやろ?
それ以上は聞かないで欲しいと言わんばかりで、聞くに聞けなくなったメンバーは、楽しみにしとくわ!と。
その瞬間に少しほっとしたような顔を見せた神ちゃんに、思わず小さく声をかけた。
「っ、なぁっ、かみちゃん」
彼の耳には、届かなかった。
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作者名:ねむちゃ | 作成日時:2023年11月25日 22時