続き【半生】 ページ4
【半生】
テテルはティエレン自治都市の貴族を母にもった恵まれた血筋の娘です。彼女には年の離れた姉がおり、テテルが生まれた頃は姉の成長期で大変な時期でした。そのため、母は姉を育てることで頭いっぱいだったので一切テテルの相手ができませんでした。テテルの面倒はいつも彼女担当の従者が行ってきました。
テテルは母親より従者と一緒にいる時間が長かった。テテルが成長するにつれて彼女はわがままになっていきます。彼女の頭には母親の記憶はありませんでした。
「あの時、初めてお母様が私を抱いてくれた時。お母様は嬉しそうに微笑んでくれた。だけど、私には違和感しかなかった。お姉様に見せる笑顔と何か違う気がしたから。」
テテルは毎日つけていた日記にそう書き記しました。
テテルは十分家族に愛されていましたが、彼女の心は歪んでいきました。彼女自身の誤解によって生み出された嫉妬心でした。
少しでも母の気を引けたら…と考えたテテルはいたずらをしてわざと迷惑かけようとしました。当然怒られましたが彼女は嬉しかった。母が初めて自分に怒ってくれたのだ。
自分のことを考えてくれたから。彼女は嬉しかった。初めて彼女が母からの愛を感じた瞬間でした。
それからも彼女は大好きな人の気をひくためだけにたくさんいたずらをした。怒られるのは嫌だけど彼女は沢山の「愛」を感じた。
テテルの誕生日。テテルは初めて王宮の外へ出ました。外の世界は広くって綺麗で賑やかでした。彼女にとっての小さな冒険でした。
街を見て回っていたらいきなり声をかけられました。「一緒に遊ぼう」と。テテルは嬉しくてすぐ了承しました。彼女に初めて友達ができました。
街のこどもたちと一緒に泥だらけになるまで遊んで母に怒られた日々もテテルは楽しかった。幸せでした。
でも、こどもたちは貴族である彼女に近づいて彼女の地位を蹴落とそうとしているだけでした。「友達」って思っていたのは彼女だけ。そう。彼女は裏切られたのです。
他にも彼女を騙して金品財宝を盗んで商人に高く売りつけ、億万長者となった人間もいました。そのことを知ったテテルは性格もどんどん歪んでいき、今のような邪悪な性格へと変わってしまいました。
「騙したり、裏切ったりする人はみんなこういうの。「騙された方が悪い」って」
テテルの瞳と心は憎しみで溢れかえっていました。完全にテテルの純粋の心は消えていました。
「返して。私の心」
そう願うテテルはもう手遅れだった。
(続きます)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むむー | 作成日時：2020年4月4日 21時
