キミの、価値しかない人生2

喧嘩3 ページ30

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廊下の隅で俯くAが見えたから、つい、声をかけてしまった。




「……ランスさぁん………！」



声をかけて上を向いたソイツは、ボロボロと涙を流していた。





は？





「誰にやられた」

「うぅ…兄様がぁ……」

「……ﾁｯ」


またか。


つい、舌打ちが漏れてしまう。





こいつの兄は、一体何回妹を泣かせれば気が済むんだ。




「こっちを向け。顔が汚いぞ」


話を聞こうにも、嗚咽で喋れなさそうだ。取り敢えず、落ち着かせなければ。


Aは大人しくこちらを向く。ランスはAの顎を掴み、上を向かせ、涙や鼻水で汚い顔を、ティッシュで拭く。


「ひどいです……。撫でてぇ……」


「ｸﾞｯ……あぁ、」



拭き終えると、ランスはAを抱き締めて、頭を撫でる。





「………話せるか？」

嗚咽が少なくなってきたタイミングでAに話しかける。



「…ランスさん、お兄さんだし……」

「あ？」

「話しても意味無いもん……」

「俺をお前の兄と一緒にするな」



妹を泣かすゴミ共と一緒にするんじゃねぇ。




「俺は、お前を否定しない」






「……兄様が、新しい髪紐をくれました」


髪紐…いつも着けているやつか。黒髪だから赤い鮮やかな色が良く映えていた。



ランスは頷く。




「でも、そのまんま。全部一緒だったんです。色も、柄も、全部」




「兄様は、私がこの色で、この柄だから好きなんだと思ってるんです」






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