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「でも前髪ぱっつん好きって！」
「うん、言ったよね。」
「嘘だったの？」
「真っ赤な嘘だよ。」
なんて野郎だ！！
あんな大勢の前で堂々と嘘をつくなんて！！
「でもさ、かもっちゃんの方が反則じゃない？」
「な、にが？」
しゃがんだままこちらを見上げてくる及川。
いつもアタシが及川を見上げることの方が多いから新鮮だ。
「俺がぱっつん好きって言った途端前髪切ってくることとか、
俺のトス幸せそうに打ったりとか、
挙げ句の果てには告白してきた女の子に、アタシも好きだから譲れとか言うんだよ。」
誰も
「ほんっと、くそ可愛くて参っちゃうよね。」
「･･････。」
「言葉じゃなくて表情で語るところも可愛い。」
ふらっと立ち上がった奴はアタシの前に立った。
「ずっと好きだったよ。」
「う、そ。」
「ほんと。」
及川のあり得ない告白に涙が溢れる。
こんな展開知らない。
「でも、今まで彼女、」
「俺バレー一筋でしょ？
かもっちゃんと付き合っても幸せにできる自信なかった。
それにこれは最近決めたことなんだけど、」
続く言葉に涙がとまる。
「俺、卒業したらアルゼンチン行くから。」
「あ、あ、アルゼンチンーーー！！！？？」
生まれてこの方日本から出たことのないアタシには未知の世界だった。
どうやらどうしても師事したい人がアルゼンチンに行ってしまったらしい。
「俺、かもっちゃんのこと好きだよ？
でもそんなかもっちゃんのことほっておいてアルゼンチンに渡ること決められるぐらい薄情な人間なんだ。」
「なにが？」
「え？」
「どこが薄情なの？」
アタシは知っている。
いつもバレーに本気で向き合って、
バレーをするみんなのことを信頼して、
自分の恋愛を疎かにしてまでストイックに打ち込めることなんてそうそうない。
「アタシは及川がアタシのこと好きって聞けただけで満足。
そりゃ、色々聞きたいことはあるけど、
なんか今はどうでもいい。」
2ミリくらい気にはしているけど。
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作者名：名も無き者
| 作成日時：2021年1月18日 21時
