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「髪切った？」
開口一番
アタシを目に入れて発した言葉に頬が緩む。
「うん、インハイ予選近いし。」
願掛け
そう言うと目尻を下げて全女子が発狂しそうな笑みを見せた。
「似合ってる。」
前とあんま変わんないじゃん、
口を尖らせるアタシはたいそう可愛くないだろう。
「かもっちゃんはインハイ終わったらどうするの？」
それはきっとバレーボールのことだろう。
「続けるよ。
大学も何個かバレーボールで推薦もらってるし。」
もう受験はあってないようなもの。
春高が終わるまで部活は引退しないつもりだ。
「及川は？」
「俺も春高まで残るよ。」
そうか、まだ一緒に自主練できるのか。
なんて不純な考えがバレないように次の質問を投げた。
「高校卒業したらどうするの？」
「･･････さぁね。」
1秒にも満たない間
それが表したのは拒絶
これ以上聞くな、といった感情が垣間見える。
「(及川の馬鹿。)」
一時間目のさー、と話を変えた及川になんともないようにその話にのった。
聞きたい。
知りたい。
彼女のような心持ちに心の中で自分を嘲る。
自分の気持ちすら伝えられないのに、及川の気持ちは知りたいと思うなんて強欲にもほどがある。
そんなアタシの耳に可愛らしい声が響いた。
「徹ー。」
あぁ、振り返らなければよかった。
長い黒髪を見た瞬間に今の自分の立ち位置を嫌と言うほど思い知った。
「さち！」
.
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作者名：名も無き者
| 作成日時：2021年1月18日 21時
