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「メガネくんが弱いことなんて周知の事実だよ。」
「そう、ですね。」
甘い汁がついた親指と人差し指を舐める。
舌先にさわやかな甘味が残った。
「そんな落ち込まないでよ。
初めから強い人間なんていないに決まってんじゃん。
弱いなら強くなればいい。
単純な話でしょ？」
「僕は強くなれるのでしょうか。」
「なれるよ。」
下を向いていたメガネくんが勢いよくこちらを向く。
ナイフをテーブルに置いて足を組み直した。
「逆になんで無理なの？」
「僕はトリオンも少ないし、空閑や緑川のように戦闘センスもありません。」
「だから？」
「え、」
「人間が本気で努力して成し遂げられないことなんてある？」
自分足に頬杖をつく。
窓の外の青空は大規模侵攻のときとはうって変わって鮮やかだ。
「空も飛んだ、離れたところから話せるようにもなった、異世界にだっていけるようになった。
メガネくんが強くなることなんて飛行機開発するより簡単なことだよ。」
それでもメガネくんの顔は晴れない。
「メガネくん、新しいものを開発するとき、人間が進化するとき、必要なものはなんだと思う？」
「･･･わかりません。」
「センスでも
型にはまらない発想とそれを実現しようとする根気だ。
飛行機だって電話だってたったひとつのひらめきと長い試行錯誤の上で出来上がったんだから。
君が弱いからどうした。
それを自覚しているのがメガネくんの強さなんじゃないの？」
ポケットに手を突っ込んで立ち上がる。
きっともう修はわかっているはずだ。
じゃあね、と一言掛けて扉を開けようとした私に修が声を掛けた。
「狭山先輩。」
「んー？」
「ありがとうこざいます。」
「おう、がんばれ若者。」
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作者名：名も無き者
| 作成日時：2024年3月21日 2時
