予定調和 [ ワールドトリガー ] (ページ23)

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「A。」

たくさんのチューブにつながれているメガネくん
起きているときのように心配そうな感じはなにもなくて、ただただ穏やかに眠っている。

「迅、姉さん連れて帰れた。」
「そっか。」
「でも発動できないんだよね。」

あの日からなんどか起動させようと試みた。
でも、文字通りうんともすんともいわない黒トリガーはまるで私を拒絶しているようだった。

「Aには使われたくないんじゃないか？」
「かもね。
姉さんは私が戦うの反対派だったし。」

ギュッと真っ黒のそれを握りしめた。

「でも私は戦うことをやめない。
だって最終的に私をボーダーに縛りつけたのは姉さんなんだもの。
命ある限り戦い続けるよ。」

迅はなにも言わなかった。
メガネくんの方を見て、いつも揺るぎない視線を揺るがすだけだった。

「じゃあ、俺は遊真とレプリカ先生を探しにいってくる。」
「私、このあと診察ー。」
「病院嫌いなお前がやけに素直だな。」
「忍田さんと約束したから。」

私にはあまり怖いものはない。
でも、怒った忍田さんと風間さんだけはかなり怖い。
怒らせたくない。

迅と別れて、目を開けないメガネくんをもう一度見た。

「はやく起きなよ。
あんたには待っている人がたくさんいるんだから。」

パーカーのポケットに手を入れてその場を立ち去った。

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