女帝［ワールドトリガー］ (ページ26)

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「僕、去年辻新之助くんと同じクラスだったんですよ。

それであなたの存在を知りました。

才色兼備なあなたに一目惚れしたんです。」

恍惚とした表情を浮かべる男に吐き気がする。

他人からの好意にここまでマイナスな感情を持ったことはない。

「ごめんなさ、」

「わかってます。

あなたは僕なんかには振り向かないことなんて。

だから僕は協力者とともにあなたに近づくためにいろいろな努力をしてきました。

協力者の名前は言わなくてもわかりますよね？」

「山下小百合。」

「そう！僕の姉です！！

小百合には好きな人がいました。

それは荒船哲治。

だけど小百合もまた僕と同じで叶わぬ恋。

そんな小百合のフラストレーションを溜めていたのはあなたなんですよ。

僕があなたのことを相談した時、小百合は迷わず協力すると言ってくれました。

あなたの物を盗んで僕に持ってきてくれたのも小百合です。

例えば、これとか。」

そう言ってポケットから取り出したのは、

少し前になくしたと思っていた銀色のそれ。

「あなたの物が少しずつでも手に入るだけで満足だった。

だけど、人間とは欲深き生き物。

最近の僕はもうこんな物では満足いかなくなってしまったのです。

どうせ振られるなら一回くらいあなたの体に触りたい。」

気持ち悪い。

一歩一歩近づいてくる男に背を向け扉の方に急いだ。

だが、

「なんで！？鍵！！？」

「先輩が入った後に外から鍵を閉めてもらうように小百合にお願いしておきました。

出たければ、もう一つの扉から出てください。」

まあ、たどり着けたらの話ですけど。

自分の真後ろに立った影に、

震えていることが悟られないように固く歯を食いしばって睨みあげた。

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