影浦家のYDK[ワールドトリガー］ (ページ17)

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「はい、はい、そうですか。

わかりました。

失礼します。」

母親が静かに受話器を置いた音だけが家に響く。

ソファーで体を丸めていたAに近づいた母親は、

ひどく切なそうな声でAを抱きしめた。

「大丈夫よ。

ニーナちゃんは必ず見つかる。」

ある日突然葉月は家に来なくなった。

家に電話しても繋がらない、

両親にも連絡は入っていない、

心配になった俺たちは手分けして町中を探し回ったが、

結局見つからず次の日の警察からの電話で葉月が行方不明になっていることを知った。

警察から電話がかかってきた次の日、

俺たちはランドセルを背負ったまま、

手を繋ぎ、途方もなく歩き回った。

よく遊んだ公園、

近所の駄菓子屋、

やけにでかい葉月の家、

虫取りをした空き地

そのどこにも葉月はいなかった。

足が棒のようになった。

歩き続けてどのくらい経ったのだろう。

やけに短い時間のようにも感じたし、

途方もなく長い時間のようにも感じた。

時計も携帯も持っていなかった俺たちは、

パンパンになった足で河川敷に行き、

そこに座り込んだ。

俺たちの間に言葉はなかった。

人気のない河川敷はゆっくり時間が過ぎていく。

そこで静かに座っていた俺たちは、

川縁に水色の箱を発見した。

Aはそれに飛びついた。

慌てて追いかけてAの後ろからそれを覗き込んだ。

それはよく見知ったランドセルだった。

「ニーナ！！！！！」

だけど、葉月の姿はどこにも見当たらなかった。

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