Number:2 ページ3
『水飲む？』
｢うん、いる｣
はい、と手渡されたペットボトルの水を勢いよく喉へ流し込む。
生ぬるいそれがゆったりと私の喉を潤した。
『…ごめん、ちょっと激しすぎたかも』
｢ほんとだよ。…明日、普通に仕事なんですけど｣
『ごめんなさーい』
私は地元の大手企業の受付事務として働いている。
昌磨みたいに輝かしい世界では生きていないのだ。
私には今の仕事がお似合いだろうし。
｢昌磨は？明日練習とかないの？｣
『ないからこうなったの』
｢そりゃ立派なご身分で｣
軽くあしらう私に不満気な昌磨がムッと口を尖らせた。
……さっきまでの男らしい彼とは大違いだ。
そしてそんなギャップにやられたりしちゃってる私も私だ。
『…眠くなってきた…』
｢寝よっか。私明日早いし｣
『ん〜……』
すでに眠りかけている昌磨。
あいかわらずすぐ寝るな。
朝起きたときにゴタゴタしないように、せめて下着だけは着て寝よう。
痛む腰をさすりながら、ゆっくりと下着を身につけていく。
ベッドからすでに昌磨の安らかな寝息が聞こえている。
｢……はぁ｣
こんな関係、良くないのは私が一番わかってる。
昌磨は世界レベルで活躍するトップ選手で、ファンもたくさんいる人気者。
一方で私は、どこにでもいそうな受付嬢。
そんな2人が釣り合うはずもない。
なのに、こんな関係になってしまった。
もちろん初めからこうなることを望んでいたわけではない。
昌磨とは中学生の時からの仲で、まぁまぁ仲が良かったこともあり、いつの間にか私は密かに恋心を抱いていた。
もちろん今もそう。
昌磨を好きなのに変わりはない。
ただ、私は道を踏み誤ってしまったのだ。
昌磨からすれば私は、ただの都合のいい女なのかもしれない。
そんな｢都合のいい女｣が、彼女になれるわけがない。
｢……寝るか｣
こんなことを考えてたら夜が開けてしまいそうだ。
溢れ出る暗い感情を必死に押しとどめながら、昌磨が眠るベッドへ横になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ここあ(プロフ) - 続きがきになります！ (2018年5月21日 17時) (
レス) id: 5c003d2ed5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - お話にすごく引き込まれました！更新待ってます！！これからも頑張ってください！ (2018年5月7日 23時) (レス) id: 131c1dfec7 (このIDを非表示/違反報告)
厨二病(プロフ) - このお話とても私の好みで大好きです！更新頑張って下さい！応援してます！ (2018年4月15日 16時) (レス) id: 660c61ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽて丸。(プロフ) - ゃんゃんさん» ありがたいお言葉です(；＿；)はい！全力で頑張ります！ (2018年3月26日 12時) (レス) id: 97f234e904 (このIDを非表示/違反報告)
ゃんゃん - このお話の切なさが大好きです！ これからも頑張って下さい♪ (2018年3月26日 10時) (レス) id: 3747216fb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽて丸。 | 作成日時：2018年3月12日 22時
