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 鈴芽と同時にバックからお弁当箱を取り出し、蓋を開ける。


「「きゃー、出たわー、おばさん弁当!」」


 ニ人が面白そうに声を上げ、鈴芽のお弁当を覗き込む。ちなみに今日は雀のキャラ弁当。この前は確か兎のキャラ弁当だったはず。鈴芽のお弁当を見ながら、一口、麦茶を喉に流し込む。


「今日も愛が深えねえ」

「これ作るのにおばさんどんだけ時間かかっちょっと?」

「えへへ」


 そう鈴芽は笑い声を返すが、うまく笑えていない。廃墟のこと、かな?そんな鈴芽を横目で見ながら、大好きな卵焼きを箸で取ろうとした時、前から箸が現れ、ひょいっと卵焼きを横取りされる。思わず「ちょっと!」と顔を上げる。


『あ、マミ!それ私の卵焼き!』

「早よ食わんのが悪いわ!いただきまーす!」

「まあーた、やっとる。よう飽きんよなあ」

『私のおかずがあ!』


 「酷い!」とぷんすか怒っていると、お弁当に手をつけていなかった鈴芽が「あのさあ……」と口を開いた。


「上之浦の方に廃墟あるでしょ?古い温泉街」

「え、そうなん?A、絢、知っちょる?」

『うん、綺麗だったらしいね』

「ああ、あるみたいやね、バブルの頃のリゾート施設」


 「あっちの山ん中」と絢が指差す先を、私たちは揃って見上げる。窓の向こう側には昼下がりの穏やかな港町に、小さな湾を囲む岬があり、その上に低い山がある。

 あの山が上之浦で、私と鈴芽がさっきまでいた場所だ。


「それがどうかしたと?」

「ドアが……」


 そう聞く絢に鈴芽は何か言おうとしたが、「やっぱいいや」と濁す。そんな鈴芽に「なによ!最後まで言いないよ!」と二人の声がぴったりと揃った。それが可笑しかったのか、ようやく鈴芽から自然の笑みが出た。と同時に山の方を凝視してる。

 鈴芽の視線の先を辿ると、山から細い煙が立っていた。


「ねえ、あそこ、火事かな?」

『こんな夏の時期に?』


 鈴芽と顔を見合わせていると、絢が「え、どこ?」と聞く。鈴芽が「ほら、あの山のとこ」と上之浦を指差す。


「え、どこお?」

「ほら!煙が上がっている!」

「ええ、だからどこねぇ?」

「……え?」

『……あそこ、だよ?』


 漏れた声と同時に、鈴芽の伸ばした指先の力が抜けた。


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なのは菜(2)(プロフ) - 松前菊さん» 松前菊様コメントありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです!応援ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年11月14日 22時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
松前菊(プロフ) - なのは菜(2)さんの作品、とっても好きです!是非、頑張って下さい!応援させていただきます! (2022年11月14日 21時) (レス) @page10 id: 4c0d3a01c3 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - せいなさん» せいな様コメントありがとうございます!嬉しい出会いに感謝ですね!更新頑張ります! (2022年11月13日 23時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
せいな(プロフ) - 初コメ失礼します!すずめの戸締りの夢はないのかだって探してた時にこの神作と出会えました!更新頑張ってください! (2022年11月13日 22時) (レス) @page6 id: d75ed684d2 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - ゆらさん» はじめまして!ゆら様コメントありがとうございます!わあ、こんな作品を見つけていただきありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです!応援ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年11月13日 18時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なのは菜 | 作成日時:2022年11月12日 22時

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