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草太お兄さんたちが走り去った方向を鈴芽と下っていくと、ようやく視線の先にその姿が見えてきた。草太お兄さんは脚をもつれさせながら、転がるように坂を駆け下りている。その更に先から、中学生の男女が坂を登ってきている。と、椅子が目の前に転び、ずざざーっと坂を滑り、中学生たちの前で停止した。
うわっ、痛そう。と、顔を少し引き攣ってしまう。
「おわっ！」
「ええっ、なんけこれ？」
「椅子？」
驚く彼らの前で、草太お兄さんはすくっと立ち上がり、しかしバランスが取れないのか彼らの周囲をぐるぐると回ってしまっている。「うわあ！」と謎の物体に絡まれ、恐怖の叫び声を上げる中学生たち。やがてようやく方向を定めることができたのか、草太お兄さんは彼らから離れて再び坂を駆け下り始めた。
「すみませんー！」
『通りまーす！』
スマホで椅子の後ろ姿を撮りまくる彼らに、私たちは突進してしまう。彼らをかきわけ、草太お兄さんを追う。背中でシャッター音が響きまくっている。鈴芽が小声で「これSNSに上げられちゃったりしないよね！？」と訊いてきたが、私に聞かれてもって感じでなにも答えることができなかった。
草太お兄さんの先に小さく猫の姿もあり、その先には港がある。コンビニ前のヤンキーみたいに埠頭にたむろしていたウミネコが、一斉に飛び立った。その場所を仔猫が駆け抜け、草太お兄さんが聞け抜け、少し遅れて私たちも走り抜ける。猫の向かう先には、お客さんが乗船中のフェリー。
嫌な予感を感じつつも、私たちはとにかく走る。
「おーい、鈴芽ちゃーん！Aちゃーん！」
「えっ！？」
『あれは……』
野太い声がして、そちらを見ると海を挟んだ隣の埠頭から稔さんが大きく手を振っていた。環さんの同僚だ。鈴芽によると、何年も見え見えの片想いを環さんに抱いている報われない人なんだとか。恋愛事情はわからないので、頑張れとしか言いようがない。で、今は漁船から荷揚げをしている最中らしい。
「どんげしたとーっ？」
と今訊かれても、とても返事ができる状況じゃない。
ごめんなさいと心の中で謝りながら、視線を前に戻す。この港のフェリー乗り場は単なる剥き出しの鉄階段で、トラックの運転手さんやなんかがどやどやとタラップを歩いている。
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続く (更新停止中)
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なのは菜(2)(プロフ) - 松前菊さん» 松前菊様コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです！応援ありがとうございます！更新頑張ります！ (2022年11月14日 22時) (
レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
松前菊(プロフ) - なのは菜(2)さんの作品、とっても好きです！是非、頑張って下さい！応援させていただきます！ (2022年11月14日 21時) (レス) @page10 id: 4c0d3a01c3 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - せいなさん» せいな様コメントありがとうございます！嬉しい出会いに感謝ですね！更新頑張ります！ (2022年11月13日 23時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
せいな(プロフ) - 初コメ失礼します！すずめの戸締りの夢はないのかだって探してた時にこの神作と出会えました！更新頑張ってください！ (2022年11月13日 22時) (レス) @page6 id: d75ed684d2 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - ゆらさん» はじめまして！ゆら様コメントありがとうございます！わあ、こんな作品を見つけていただきありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです！応援ありがとうございます！更新頑張ります！ (2022年11月13日 18時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なのは菜 | 作成日時：2022年11月12日 22時
