夢主を組織から抜けさせるにはハニトラしかない【降谷零/赤井秀一】

30.よろしく頼む ページ32

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Aside



生憎"愛してる"なんて言葉は、ハニートラップを仕掛ける上でのリップサービスでしか聞いたことがない。


ジンもライもバーボンだって、私にハニトラみたいなことばかり仕掛けてくる。
溜まってただとか、ただ単純にシたかっただけとか、理由は色々あるのかもしれないけど。

でもそれは私が"女"だからで、"私"だから求めてくれているんじゃない。


こんな組織にいておいて、いつか誰かに愛されようだなんて、傲慢で甘い考えかもしれない。

だけどほんの少しで良いから今後の人生に期待したいなんて口が裂けても言えないのだ。

…こんな時でもない限り。




いきなり声色が赤井秀一へと変わったことで驚いて顔を上げれば、そこには完全に見知った顔があった。


おそらく変声器のスイッチを切るのと同時に変装も解いたのだろう。
本当にライで秀一だった。別に疑ってたわけじゃないけど。



赤井「木馬荘の件もそうだが…住む場所を失ったお前が、セキュリティの欠片もないあんなボロいアパートに1人で住もうとするから、お前のことが心配で隣の部屋に住むことに決めたんだ。

俺がここまでする意味くらい、お前ならわかるだろう？」



…アパートに謝ってほしいし、やってることほぼストーカーと一緒だし、私の表向きの職業が無職だったからあのアパートくらいしか住まわせてくれる場所がなかっただけだから。

でも、確かに秀一はそういう男だった。



赤井「…A、俺の女になってくれるか？」



『…その言い方がいやだ』



赤井「……困ったな。これ以上の女の口説き方を俺は知らないんだがな」



秀一は心底まいったように溜息を吐いて左手でその前髪をかきあげた。



『……………………なる』



ｯくっっっっっそ！！
いちいち本気で弱ったみたいに髪をかきあげながら言わないで！！
灼熱を無理やり閉じ込めたみたいな瞳を向けないで！
こんなの卑怯だ！不公平だ！
ｯこんなの秒速どころか光速で手のひら返すわ！！





コナン「……え！？なるの！？」


赤井「…ならこのボウヤが証人だ。
撤回させるつもりはないがそれでいいな？」


コナン「…………だから敢えて僕を追い払わなかったの？」


赤井「今から俺たちは恋人同士だ。よろしく頼む」


『…ちくしょう。嵌められた』



いつか絶対逃げ出してやると思いながらも、心底満足そうな微笑みをたたえるひたすらに顔が良い男の顔を見て、もうしばらくはこのままいてあげてもいいかと思った。



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