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*side zero





「安室さん、昨日のドラマ見ました?」


お昼も過ぎて、店内には梓さんと僕の二人だけ。
モップをかけていた手を一瞬止めてしまう。



「淫らな彼女、でしたっけ。見ましたよ。」

「へえ、安室さんも、ああいうドラマ見るんですね。

主演の子、すごかったですよね。わたしもう途中鳥肌止まらなかったですもん!」



ハハ、そうですねと笑って見るものの、どんな話だったのか、よく覚えていない。


最近人気だという女優が出るから、今回はあのドラマにも注目が集まると知って
探偵たるもの流行に遅れてはならぬとテレビをつけたはいいものの、
そこに映る彼女の姿に驚愕して食器を落とした。


まさか、と彼女の名前で検索をかければ
女優の彼女が出るわ出るわで、ドラマの中身を理解する暇などなく。

最後に見た五年前の彼女とは違い、ずいぶん垢抜けたその姿には鳥肌がたった。




....もう五年も前なのか。

Aと別れた年月を一年、二年と数えているあたり、
事実は片付いているのに、僕の頭ではまだ整理できていないんだろう。



死別が一番いいと言われた。
それならきっと、残る未練もいつか時間が解決してくれる、と。

けれど実際、Aの中で解決してくれても、僕の中の未練はそう簡単に解決できるはずもなかった。


あの半年間は、まだ僕の中に大きな影を残している。



「安室さん..?大丈夫ですか?

安室さん、」





「ああ、大丈夫です。少し考え事を」

「考え事ですか?こんな怖ーい顔してましたけど」


「そんな顔してましたか?やだなあ。


なんでもないですよ」



ぐうっと背を伸ばして、エプロンの紐を結び直す。

付けっ放しのテレビから昨日のドラマのコマーシャルが流れてきた。

Aの声が鼓膜を揺する。



今の僕には、彼女との関わりなど一つもない。

テレビの向こう側というのは、その現実を容赦なく突きつけてきて、心臓が痛い。





ハアーーー!?と頓狂な声が上から降ってきた。




「上は今日も賑やかですねえ、安室さん」



その名前だけが、Aとの唯一の繋がり。




.



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作者名:睡眠ちやん | 作成日時:2018年9月13日 22時

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