今日も彼女は笑顔を作る 【HQ】

何で…。 ページ10

何とか意識を保ちながら私は及川さんに家までの道を案内していた









「あ…そこの角を…」









と私が言いかけた時、









『…篠原？』









聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。









『…と、及川…』









声のした方に顔を向けてみると、そこには菅原がいた。









『あらら…烏野の爽やかくんじゃん。』









“爽やかくん”

とは、菅原の事だろうか









『…篠原は何で及川の背中に乗ってるの？』









菅原の声はいつもよりワントーン低い気がした。









「あ…えっと…」









『体調悪くて歩けなくなってたところに俺が通りかかったんだよ』









うまく答えられない私に変わって説明してくれた及川さん。









『…体調悪くなったのって、いつから？』









一方的にどんどん質問してくる菅原に違和感を感じながらも、私は答えた。









「部活中…」









朝から体に異変はあったけれど、酷くなったのは部活中の時だ。









『…なんで？』









え…？









『それなら、部活中に言えばよかったじゃん。
そんなんになるまで何で言わなかったわけ？』









こんなトゲトゲとした言葉を菅原の口から聞くなんて思いもしなかった。









「……」









“何で言わなかったわけ？”









何でって…









だって、









…だって、皆谷地さんの事でいっぱいいっぱいだったじゃん。



それなのに、私が何か言いだしたりしたらもっと大変な事になっちゃうじゃん。









…ちゃんと、それを考えて遠慮して言わなかったのに









何で私が怒られなきゃいけないの









私は…、悪くないじゃん。









…そうは思ったものの、

ここで私が余計な事を口にしたらきっと面倒くさい事になるから









「…ごめんなさい」









いつも通りの何の感情もない貼り付けた言葉でそう言った。

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