今日も彼女は笑顔を作る 【HQ】

背中。 ページ12

会話もないまま、ただただ歩いていた









冷たい夜風が頬にあたって気持ちいい。









もしかして、熱でもあるのだろうか









『篠原、大丈夫か？』









いきなり数歩前を私の手を引きながら歩いていた菅原が止まり、振り向いた









「え、うん…」









『背中に乗った方が楽か？』









「……ううん、大丈夫」









さっきまで及川さんの背中に乗せてもらっていたおかげか、まえより気分は楽だ









『…そっか』









それだけの会話をし、菅原はまた私の手を引いて歩き出した









が、すぐに止まり









自分の腰を少しかがめて、『…乗って』と言った









「え？」



訳が分からず私はそのままフリーズしていた









『……それでもし後で歩けなくなったりしたら面倒だから』









あぁ、そういう事か。









私は黙って菅原の背中に乗らせてもらった。









「……」


『……』









再び、沈黙。









やっぱり今日の菅原は何だか少しトゲトゲしているような気がする。









…あぁ、烏野のマネージャーの私が他校の人にまで迷惑をかけてしまったからか









きっと、そうだ。









…でも、









『寒くないか？篠原』









何気ないところにも気をかけてくれるこの優しさは、いつも通りだ









「うん、大丈夫」









菅原の背中は、多分誰よりも暖かい。

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