story11 ページ15
陸奥守吉行に大広間は任せて、僕は薬研藤四郎を連れて手入れ部屋に向かうことにした。
こんのすけの言う通りにして、手入れ部屋の入り口の札掛けに手伝い札を引っかけて中に入る。
中は初めて見た光景と全く変わらず短刀達がぐったりとしていた。
『お待たせしてすみません』
ぽつりと誰に告げるでもなくそう呟くと手入れ道具に手をかざし霊力を流し込むイメージをする。
すうっと体の中から何かが抜けていく感覚がした。
そうするとぶわりと光が部屋の中を包んだかと思えば次の瞬間、たくさんの桜が辺り一面に舞い散った。
視界が桃色に染まり思わず目を腕で塞ぐ。
一体何が起こっているんだ、何か間違っていたのか。
風が止んだのを感じ腕を離して辺りを確認すると其処には先程まで刀の姿だったりボロボロで倒れていた少年達が戦闘服に身を包み元気に立っていた。もちろん彼らの体に傷痕は無く手当てが成功したのだと言うことが分かる。
良かった、僕にも出来たんだ。
成功したという安堵からふぅと息を吐き出していると前方から声が掛けられた。
「ありがとな、大将」
にかりと微笑む彼の姿はとても格好よくて眩しくて、彼らは神様なのだと改めて思い知る。
というか、大将って……。
「あ、あのっありがとうございます」
「ありがとう主さん!」
「ありがとうございます!」
彼の後ろから次々と少年達がお礼を告げるものだから困惑してしまう。
別に僕は特別な事はしていない筈だ、どうして。
それに、彼らは僕の事を主だと認めたのか……?
僕が言うのもなんだけど簡単に認めすぎじゃないだろうか、もう少しぐらい警戒されると思っていただけに呆気に取られてしまう。
『どうして、僕の事を主だと……?』
「あんたは俺達のために働いてくれた、それじゃあ理由にならねぇか?」
「僕達、意識はなかったけどずっと見てたんです!主様が僕達を手当てするために資材を集めてくれたこと」
「それに大将からは悪い気配を感じねぇしな」
なんて器の広い神様達なんだろう……。
こんなに良い神様達に無礼を働いた前任の審神者達が理解できなくて、許せない。
怒りを表に出して恐がらせないようにぎゅっと手のひらを握り締める事で堪える。
「主さん皆さんの所に行きましょう」
桃色の髪をふわりと揺らす少年、確か名は秋田藤四郎、その彼が僕の腕をクイッと引っ張り大広間に行こうと促してきた。
そうか彼らも仲間に早く会いたいんだろう。
『そうですね、向かいましょうか』
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カモ太郎(プロフ) - マカロンさん» コメントありがとうございます。応援嬉しいです!出来るだけ更新できるように頑張ります! (2018年7月26日 16時) (レス) id: c7ec78e799 (このIDを非表示/違反報告)
カモ太郎(プロフ) - チェシャさん» かなり遅くなりましたがコメントありがとうございます。不定期更新ですがお楽しみ頂けると嬉しいです! (2018年7月26日 16時) (レス) id: c7ec78e799 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - とっても面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!! (2018年7月18日 18時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ - これからのてんかいが気になります!更新p(´∇`)q ファイトォデス♪ (2018年7月10日 0時) (レス) id: bce2687db4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カモ x他1人 | 作成日時:2015年7月25日 0時