◎会いたかった（1） ページ43
・
『あー……どうしよ、とりあえずなんか飲み物……ホットココアでいい？』
「…っす、」
『……うん、ちょっと待ってて』
コップの並んだ戸棚を開けて、マグカップをふたつ、取り出しながら。内心、動揺が見て取れないか、心配だった。
やばい、やばいな。俺、今までどうやって、葛葉くんと喋ってたんだっけ。多分、突然で驚いたのと、空白期間と、緊張のせい。普段通り、自然に、なんて思えば思うほど、分からなくなる。
俺いま、葛葉くんから見て、変じゃないかな、ちゃんと歩けてる？ひとつひとつの仕草が、ぎこちなくないかな、って。不安で。君から、俺はどう見えているのか、気になって仕方がない。
コト、と。マグカップをテーブルに起きながら、葛葉くんを盗み見る。
黒いパーカーに黒いスウェットパンツ、それから黒いキャップを被っていて。葛葉くんらしい、もうずっと、見慣れたはずの格好なのに。なんか。なんか。なんだろう。
めちゃくちゃ、可愛く見える。やば。1ヶ月近くぶりに見る好きな子の破壊力、すごい。そわそわきょろきょろしながらちょこん、ってソファに座ってるの、可愛すぎる。
ちゃんと話さなきゃいけないって、分かってるのに。もう全部すっ飛ばして、何も考えずに抱き締めてしまいたい、なんて。
俺はずっと、そわそわした、浮ついた気持ちで。何で来てくれたんだろ、って。俺に会いたくて、会いに来てくれたのかな、って。
自惚れた、都合のいい勘違いだと、分かっていたはずなのに。
「……あの、俺、さっき、たまたま松永さんに会って。……多分そろそろ、一段落してる頃だろうから、行ってみたら、って、」
『……ああ、』
なんだ、そういう。頼まれたから、様子見に来ただけか。
思考の中で少しずつ、高まっていた期待と高揚感が、ゆっくりと下がって、冷えていく感覚。まあ、そうだよな。
「……なんか、最近、あんまり寝てないって聞いたから、俺、」
『……ふ。ごめんね。あの人、自分が行くの面倒だからって、何も押し付けなくてもいいのにね』
ほんと、やめてくれよ。なんだよこれ。余計、辛くなるだけじゃん。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 573人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこ(プロフ) - もうこのお話を読むために日々頑張っていると言っても過言では無いくらい大好きです😇💗無理なさらない範囲で頑張ってください！！応援しています-`📢⋆ (3月24日 0時) (
レス) @page45 id: 176a047b16 (このIDを非表示/違反報告)
seeenraaa(プロフ) - 最近の生きる楽しみです😭💖えーるさんのお話大好きです！更新ありがとうございます🙇🏻♀️ (3月22日 0時) (レス) @page43 id: 42880fca27 (このIDを非表示/違反報告)
ゅ ぅ ゅ 。(プロフ) - はぁ~~~~……すき。 (3月9日 23時) (レス) @page18 id: 306f53c7de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えーる | 作成日時：2024年3月5日 23時
