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『スウォン』
「A」
スウォンはとても物腰柔らかそうな好青年。
きっと、スウォンは優しいんだろう。
ヨナや私、ハクへの想いに嘘はないから。
『ヨナは?』
「どこかに行ってしまいました」
眉を下げそう言うスウォンは、とても可愛らしいと思う。
『ねぇ、スウォン』
「何です?」
『聞きたいことがあるの』
「はい」
私は前世から鼻がいい、相手の感情まで分かる。
けれど、相手が何を思っているのか正確に分かるわけではないんだ。
私が今、分かってるのは、ただスウォンから危険な匂い、何かを企んでいる匂いが偶にすることがあるということだけ。
スウォンは私の鼻のことを知っているから、多分香水で匂いを誤魔化してる。それが何よりの証拠だ。
『何も、企んでないよね?』
「......それは、どういう」
『いや、ただ...スウォンから、危険な匂いがするから』
「そうですか。何も企んでいませんよ」
嘘だ。微かに嘘の匂いがする。
何か企んでるんだ、でも何を?
何を企んでるんだろう。
『そう、信じるよ。私』
「はい」
『ヨナを悲しませたら、許さないから』
「肝に銘じておきますよ」
スウォンはそう言うと私の頭を撫で、ハクと父上を探しに行った。今日は父上と寝ようかな、何だか胸騒ぎがするし。
『父上』
「どうしたんだい?」
『父上は、ヨナの想いに気が付いているのでしょう?』
「...そうだね、何となくだが気が付いてるよ。
でも」
『ヨナの想いには応えられない?』
「ああ、ヨナの夫となる者はこの国の王になる者だ」
私のヨナの姉だけど、幼い頃から補佐の方が良いと宣言している。だから、私ではなくヨナが皇后となるのだ。
『そっか』
父上は、スウォンはこの国の王の器ではないと思ってるんだね。
でもね、父上。私は、スウォンこそがこの国の王になるべき人物だと思ってるの。
『父上、死なないでね』
「Aが何に恐怖し、何故親しい者の死に敏感なのかは分からない。
でも、私はまだ死なないよ」
『うん』
私は怖い、人の死が、親しい者の死が。
知ってるから、この日常が当たり前ではないことを。
何かを拍子に、すぐ壊れてしまうほど脆い硝子の上にあることを
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作者名:深琴 | 作成日時:2022年2月4日 9時