その恋、826円で買います。【赤】

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「じゃあ、私とだいきは……。」

「恋するべくして出会った、運命の相手……って感じ？」



なんかちゃんと言葉にするとはずぅ、と私のことを強く抱きしめる。

私もそっとだいきの背中に手を回した。



「……待っててくれたんだ。」

「そうやで、ほんまウジウジしやがって。」

「だって、崇裕くんのこと好きだったから。」

「やめ、俺の耳元で ゛たかひろくん ゛って呼ぶん。」

「ヤキモチ？」




意外と、ヤキモチやくんだ。

なんだかそれが嬉しくて

「崇裕くんはね、」ってお話をする。



その度に私のことを抱きしめる力が強くなるから、私も強く抱きしめ返した。





「……だいき？」

「ん？」




やっと呼ぶことのできた彼の名前に、だいきは優しく反応してくれる。





「826円で恋を買うとか、意味わかんないって思った。」

「はは、あいつは ゛りゅーせい ゛ってゆーねん。」

「友達？」

「そ、じゅんたの従兄弟で、よく研究室で遊んどった。」





だいきは意外にもお友達が多いんだね、今度会わせてよ。


そう私がいうと、彼はええよと言ってくれる。






「誕生日、おめでとう。」

「あ、知ってたんだ。」

「そりゃ、専属のお誕生日やもん。」

「でも、さっきの話からすると
私の3歳の誕生日の時にだいきが造られたなら、誕生日同じ？」

「そうやなー、たしかにそうや。」




8月26日。

それは私の誕生日でもあり、彼が生まれた日でもあるんだ。


だから「おめでとう。」ってキスが落ちてくる前に伝えるの。




「……っ、最後まで言わせろ。」

「誕生日、誕生日！」

「もー……。」



でも「おめで、」くらいまでしか言わせてもらえなくて。



その熱は、たしかに私の体を駆け巡るんだ。





「826円の恋も、悪くないやろ？」





誕生日がロボットの値段。

だから826円なのね。



私の、専属恋愛ロボット。


運命の、恋の相手。





「……ちょっと高いんじゃない？」

「それどう意味や(笑)」





少子化対策とか、国家機密とか。

正直意味わかんないけど


こうやって私のことを抱きしめてくれて、抱きしめ返すことができて


「おめでとう。」「おめでとう。」

「ありがとう。」「ありがとう。」


と笑い合えることの出来る。



そんな彼がいるから、まぁいいのかなって。


私は単純。





「好き。」

「俺も。」





826円の恋も、悪くない。






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「その恋、826円で買います。」 Fin



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