その恋、826円で買います。【赤】

！ ページ17

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「……ほんま、Aずるい。」



くしゃーっと髪の毛を乱して、ふはっと笑うだいき。

彼の手が私の頭から頬に変わって、優しく触れられる。



「今日、Aが帰ってくるのはわかっとった。」

「え？」

「俺のことを好きになることも。」

「え、え？」



笑顔のままドヤ顔を決めて、私のことをぎゅっと抱きしめる形に。

でも1段分段差が高いところに立っていた彼と、もともと彼より身長が低くて更に1段下にいる私じゃ釣り合わなくて



「おわっ、」と2人で声を揃えたと同時にバランスを崩してだいきが後ろに倒れる。




「はっは、Aおっも！」

「う、うるさいっ！」



全体重をかける形になってしまったからどこうとするけど、回ってきた腕が私を捉えて

逃げ出そうにも逃げ出せない。



「ちょ、だいき……っ。」

「……俺、ずっとAのこと見てたんやで。」

「え？」



耳元で語られる、彼の話。



「俺たち恋愛ロボットは、誰かが生まれる度に、その生まれてきた子専用のロボットとして作られる。

まぁ、生まれてから製造まで時間かかるから大体その子の3歳の誕生日の時に完成するんやけど。」



「じゃあだいきも、」



「そ、俺はAが3歳の誕生日の時に完成した

Aだけの恋愛ロボット。1992号機。」




国家機密で動いているというこのプロジェクト。

そんなことがあり得るなんて……。




「もし28歳の時、恋する相手がいない時。

そんな時は確実に好きになって、恋をして、結婚して、子供を産めるようなそんな存在が

少子化の今には必要だ、ってじゅんたのおとんは言ってた。

まぁ、じゅんたは『有り得へん。』って否定しとったけど。

それもな、じゅんたのこともわからんくもないねんな。


その恋する相手がいて、結婚することが決まっている人が、その子にいた時。


俺たちは解体されてしまうから。」



「かい、たい？」



「用無しってことや。

恋愛ロボットは、あくまでも少子化のために作られた、国家機密のロボット。

俺はその数いる中の1人で、もしその存在の意義がないなら維持してるお金が勿体ない。

でも俺はギリギリまで粘ったんやで。


Aが ゛たかひろくん ゛のことを忘れるまで、待っていたかった。」





専属で作られたロボットは、その専属の子の気持ちがわかる。

だから私の中から ゛たかひろくん ゛が消えた時


だいきは現れたのだと



彼はそう言った。






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