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「許嫁……がいるって聞いたけど？」
沈黙に耐えきれず、私は口を開いた。
「知ってたんだ…」
「じゃあもう話すしかないね」
私は身構える。
「許嫁…っていうのか分からないけど、そういう人はいる」
「やっぱり！じゃあ私のことは遊びだったん…」
「それはちがうよ」
彼の目は、心なしか潤んで見えた。
「本当に、好きだったよ…でも、家族を救うにはそれしかすることができなかったんだ…」
「付き合ってから許嫁ができて、Aちゃんのことは諦めるしかなかった…」
正直、高校生で許嫁がいるとか家族のためとか非現実的だし、信用ならない部分もあった。
でも、少なくともそんなくだらない嘘をつくような人じゃないことは付き合っていて分かった。
「…家族を救うってどういうこと？」
「ごめん、それは親父に口止めされてるから言えない…。本当にごめん…」
「そっか。まあいいや」
「じゃあ私もう行くわ。その婚約者と精々お幸せにー」
涙を堪えてることを悟られまいと必死だった。
「待って」
彼が言う。
「まだなにかあるの？」
「ずっと、好きだったよ…今までありがとう」
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作者名：きつつき | 作成日時：2019年11月1日 20時
