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「私、ずっと好きだった人がいて」
輝ちゃんは言葉を選びながら話しているように見えた。
でも、好きな人がいるなんて意外ではある。
「近所に住んでてさ、すごい仲良かったんだけど段々好きになってて…」
「でも、それに気付いたときに引っ越しちゃったんだ。好きだったやつが」
「えっ」
「ダッサいよなぁ…気持ちを伝えることもできなかったんだ」
切なげに輝ちゃんは笑う。
「だから正直、Aの話しを最初に聞いたときは“近くにいるだけ、想いを伝えられるだけ良いじゃないか”って思っちゃったんだ」
その通りかもしれない。傷付いたりもしたけれど、元気かとかどうしてるかとか分かるわけだから。
「ごめんな。でも許嫁がいたり、たまたま出くわしたときのAの顔を見てそんなこと簡単に言ったらダメだなって思った」
「そんなことないよ…」
「あいつには私じゃない好きな人がいたんだ。だから自分の気持ちからも逃げてた」
「でも前に進むお前を見て、私も頑張ろうって思えたんだ」
「ありがとう、A」
苦しいのは、私だけじゃなかった。みんな、そうやって生きてるんだ。
「私も、私からもありがとう。出会えてよかったよ、輝ちゃん」
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作者名：きつつき | 作成日時：2019年11月1日 20時
