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「ぁ………」
この声は…それに、この名前…。
「智くん…ごめん。ちょっと待って！」
彼女が、そう言った。
あぁ、そうか。だからなんか見たことがあるような気がしたんだ。
神様は、なんて意地悪なんだろう。どうしてそんなに、私を苦しめるの…？
もう、諦められたと思っていた。
吹っ切れられたと思っていた。
彼は、智くんは、もうどこにもいないのに。
でも、まだ私は恋をしていた。
好きなんだ。どうしようもなく。
「どうかなさいました…？」
彼女が、葵さん、が私の顔を覗き込む。
「あ、いや…」
意地でも彼の顔を見ないように、少しだけ顔を上げる。
「あ…」
彼が、私の存在に気付いたらしい。
「あれ？智くん、知り合い？」
「あ、うん…」
駄目だ。目が潤っていくのを感じた。
「そうだったんですね〜あ、じゃあ二人でお話でもどうですか？あれ、どうしたんですか…？」
何も言わない私に、心配そうに葵さん、が声をかける。
泣いていることがバレる。ヤバい―――。
ｸﾞｲｯ
「うわっ」
腕を引っ張られ、自分の口から、そんな情けない声が出る。
「！」
どこまでも、貴女は―――
「この子、最近彼氏ができたんです！自分達とあなた達を重ねてなんだか感激しちゃったのかな？多分、そうだと思います。とってもピュアで良い子なんですよ」
貴女が、そう言った。
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作者名：きつつき | 作成日時：2019年11月1日 20時
