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食堂ののれんをくぐって中を覗くと、そこにAの姿は無かった。
「あれ?おばちゃん、Aは?」
八左ヱ門が食堂のおばちゃんに尋ねた。
「Aちゃんなら、ついさっき出て行ったわよ。食欲も無かったみたいだし、心配だわ。」
「(どうしたんだ?アイツ。)」
「おばちゃん、豆腐定食で!」
兵助がキラキラした目で、おばちゃんに言った。
「はいはい。他の皆は?」
「「豆腐定食じゃない方で!」」
兵助以外の皆が、口を揃えて言った。
「えぇ〜!何で皆、豆腐定食じゃないんだ?」
「「(お前のせいで、豆腐に飽きたんだよ!)」」
口には出さなかったが、皆の心の声がハモった気がした。
...
食堂のおばちゃんから、焼き魚定食を受け取ると、空いていた席に座った。
皆で、
「「いただきます!」」
…と言うと、すぐに八左ヱ門と兵助は食べ始めた。
が、私と雷蔵、勘右衛門はすぐには食べる気にならず、沈黙が続いた。
「…八左ヱ門。」
沈黙を破るように私が口を開いた。
「何だ?」
八左ヱ門がのんきな顔をして言った。
「何か私達に隠してることは無いか?」
「…!」
八左ヱ門の顔があからさまに変わった。
「と、特にないけど…。」
「Aと一緒に隠していることとか無いのか?」
「…。」
しばらく沈黙が続く。
「あぁ、あるさ。でも、これだけは言えない。Aと約束したんだ。」
八左ヱ門が真っ直ぐな瞳で私達を見る。
直視したら、相手のペースに飲み込まれてしまいそうだったから、思わず目をそらした。
「それが本当に、Aのためになるのか?だとしたら、私達はこれ以上は追及しない。でも、違うなら…。」
「俺には応えられない。Aに聞いてくれ。」
そう言い残すと、八左ヱ門は食堂から去って行った。
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nayu(プロフ) - 白狐さん» コメントありがとうございます!了解です!順次、作成していきます(`・ω・´)ゞ (8月5日 7時) (レス) id: 754bc10f42 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - お話を読んで面白かったです、連日の猛暑が続いてますので熱中症などにお気をつけてください。それであの落ち着いたらでいいですので、富松作兵衛を中心とした三年ろ組の絡んだお話が読みたいです。 (8月4日 19時) (レス) @page10 id: 9822cc9766 (このIDを非表示/違反報告)
nayu(プロフ) - 夜桜ほたるさん» コメントありがとうございます🥰了解です!五年生編が終わり次第、六年生多めの話も作りたいと思います。 (7月31日 22時) (レス) id: b0b40a7cac (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!!・・・・できれば6年生のお話が見たいです!お願いします〜 (7月31日 20時) (レス) @page8 id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nayu | 作成日時:2023年7月24日 17時