#1 出会いは突然 ページ2
「……花子、ちょっとこっちにおいで」
「ん?まーくんどったの?……うわ、何これ」
あたしの毎日の習慣、朝の散歩にあたしの伯父さんであるまーくんこと田中真と浜辺を歩いていた。雲ひとつない真っ青な空と陽にあたってきらきら光る海がすごく綺麗で、鼻歌まじりに歩いていたら不意に呼び止められる。
まーくんが指指す方向を見れば波打ち際に横たわるおっさん。紫色のシャツが海水で濡れて肌に貼り付いてるし、染めてるのか分からない金髪は力なく波に揺れている。
「人だな」
「見りゃ分かるし」
「何処の人だろ、このおっさん」
「まーくんもおっさんでしょ」
「いや、俺はまだおっさんじゃないから」
「嘘つけおっさん」
見たところ結構でかい。そして髪型がびっくりするレベルで特異だった。高校なら異装届けを1万字ぶんくらいきっちり書かなきゃ許されないような髪型だった。よくよく見れば金髪は地毛のようだ。
おっさん、と姪っ子に言われてしょんぼりするまーくんを尻目におっさんを裏返す。うつ伏せじゃ顔も見えないし。
「よいしょ、」
裏返してまずびっくりしたのはそのボディ。何がびっくりかというと、簡単に言えば良い身体だったから。腹筋は綺麗に割れてるし胸筋の盛り上がり具合も素晴らしい。何か刺青みたいなのが見えたけど見ないふり。
次に顔のパーツ。ぽってりした厚めの唇と顎ひげがすごく色っぽいし、顔立ちも整ってる。鼻が高くて少し彫りが深い。外人さんだろうか。とにかく恰好良いおじ様だったのだ。
「………ねぇまーくん」
「何?そのおっさんどうすんの」
「保護しよ」
「は?」
「この素敵なお方を保護しよ」
「え、俺ンこと?」
「喧しいよおっさん」
あたしは恰好良いおじ様に目がないのだ。良い身体、顎ひげ、そしてちょっと香る煙草の匂い。どう考えても保護しないほうがおかしいレベルで恰好良いおじ様なこのお方を保護しない理由なんてあるのだろうか。いや、無い。
最近、災害時を想定して云々とかいうつまらない授業でやらされた人の運び方を思い出す。小柄な人でも大柄な人を運べる、というやつだ。早速不満気なまーくんに指示を出して2人で家まで運んで行った。
「なんでこんな見ず知らずのおっさんを……恰好良いおじ様なら俺がいるじゃんよォ……」
「あっ、…このお方の胸筋程よい弾力が……ああっ!みっちゃんの胸に手ェ当たった時よりドキドキする!」
「頭大丈夫?まーくん、お前のことすげェ心配なんだけど?」
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作者名:三藤 | 作成日時:2016年9月1日 18時