ずっと傍にいてよ【 赤 羽 業 】

Love or Voice ページ25

「あ、帰りで会うのは珍しいね」

『ほんとだ、珍し…ごほっ』

「まだ治らないの？もう随分経つけど…」

『いや、昨日友達とカラオケに行ってて…』


もちろん、そんなのは真っ赤な嘘だけど。
喉の痛みはまた増していた。
夜は咳が止まらず寝付けないことも多々ある。


「喉、大事にしなよ。Aちゃん、声綺麗なんだからさ」

『えっ』

「ぷっ、何その顔」


声が綺麗、なんて初めて言われた。
何よりカルマくんが言ってくれたっていうのが嬉しすぎる。


『そんなこと、初めて言われたから…』

「そうなの？俺はずっと思ってたけど」


同じ駅で降りて、お互い歩いて帰路につく。
途中までは、確か同じ方向。

帰りの時間が被るのは珍しいから、うろ覚えなんだけど。


「ねぇ、Aちゃん」


カルマくんが立ち止まるから、つられて私も立ち止まる。
二歩分前にいるカルマくん。
だから顔は見えないけど、声は心なしかいつもより真剣な感じだ。


『どうしたの？』

「俺さぁ、」


ゆっくり後ろを振り向いたカルマくん。

あ、私、期待してる。
この先の言葉を。

だけど、ダメ。

それを聞いてしまえば、私は、きっと＿＿＿


「Aちゃんが、す…」

『待って』

「え、どうしたの？」

『私の声が出るうちに、話を聞いて』


呪いの話を素直に話した。
人に話すのは、これが初めて。

カルマくんは信じてくれないかもしれない。

だけど声が出なくなったら、あぁ、あれは本当だったのか、と心の片隅で思ってくれればいい。


『だから、私…』

「それってさ、俺を好きってこと？」

『ダメ、言わせないで』


それを口にしてしまえば、きっと私は。









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Three＿Love or Voice
(天秤が傾くのは、どっち？)

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