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『別に、良かったんです。仕方ないことだって分かってたし。でも、人気になるほど、怖くなったんですよね。いつか、話さなくなるのかって』
当たり前のこと。
当たり前のことなんだって。
知ってるけど、今までの生活が壊れていくのが怖かった。
すると、メンバーが練習スタジオから帰っていく中、トウマは俺に話しかけてきた。
「A。最近、調子悪いけど大丈夫か？あまり話さないし」
『……トウマ、もし、俺が脱退したいって言ったらどうする？』
冷や汗が流れる。
トウマも、固まった。
元々、兄さんの代わりで、本当のメンバーではない。それなら、こんな怖い気持ちするくらいなら辞めた方がいいんじゃないか。
俺たち二人以外誰もいないステージの上。
呼吸の音も聞こえないくらい、静かになる。
「……どうしてだ？今が一番燃えるところじゃねえか。最近のCDの売上も上がってきてるし、事務所からオファーも何個も」
そういう事じゃない。
でも、こう思うのは仕方ない。
だけど、無性に腹が立った。
トウマは、何も思わないのかよ。今の現状に。
『……違う。俺は、人気なんか要らない』
口から、自然と出ていた。
『……俺、やっぱり辞める。ギターくらいなら代わりもいるだろうし、元々、俺は兄さんの代わりだから、いいだろ？別に。アイドルなんてもう散々だ』
「は、はぁ！？突然何言ってるんだよ。今まで頑張ってきたじゃねえか！！それなのに、そんな簡単な言葉で辞めるなんて」
トウマは俺の肩を強く強く掴み、大きな声で怒鳴る。
何故か、笑えてきた。
本当、何で分からないんだよ。
俺が苦しんでる気持ちも知らないで、勝手に言うなよ。
『……性格悪くてごめんね』
涙が頬を伝う。
その日から、俺はNO_MADのメンバー全員に会わなくなった。
実質、脱退となった。
TRIGGERとも戦わず、俺はNO_MADから抜けた。
まともにメンバーに理由も言えず。
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