オフィスラブ（緑） (ページ31)

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私を今、抱きしめているのは私の以前の彼氏。

そして今は、私の勤める会社の社長。

別れた理由が私のためであるということを知り、

また、現在でも私のことを好きで、付き合いたいと言う。

渋｢…俺のこと、好き？｣

あ｢…｣

そんなこと言えるわけない。たとえ、好きだとしても。

渋｢この身体も、心も…俺のもんやったのに…｣

私の肩に頭を乗せてそう言った。

話す度に、彼の息が私の肩にかかり、びくついてしまう。

渋｢…手放さなきゃよかった｣

…ずるい、ずるいよ。

ドキドキしてるのは、イケメンから抱きしめられているからだよね。

あ｢…社長、…はなれて｣

彼の細いくせに、筋肉のある胸板を押した。

渋｢社長やない。…すばる｣

離さない、とでも言うように彼はまた強く抱き締めた。

あ｢はなれて、…すばる、｣

そう言うと、フッと笑いまたぎゅっと抱きしめ、離れた。

渋｢…A。たとえお前が誰を選ぼうが、俺は誰もクビにしたりせぇへん｣

心配せんでもそんなことせぇへん、そう言って、私の頭を撫でた。

渋｢俺か、亮か、おーくら。……お前はだれを選ぶ？｣

そう言った瞳は、とても優しくて…

あ｢……｣

すばるは私のこと、よく分かっている。だから彼は、私の下した決断をもう分かっているんじゃないかな。

渋｢先行き？｣

そう言った彼に従い、私は会議室のドアノブに手をかけた。

渋｢A。…好きやで｣

振り返ろうかと思ったけど…振り返ったら意志が弱まってしまいそうで振り返らなかった。

渋｢…あーぁ、あいつは誰のもんになるんやろ…｣

渋｢…きっついなぁ、｣

下唇を噛みながら、そう言った彼を知る由もなかった。