また会う日を楽しみに【緑谷出久】 (ページ7)

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『わぁ…綺麗だね』

緑谷「うん、まさかこんなに綺麗とは思ってなかった」

私たちの前に広がるのはお花畑。

暑かった夏は過ぎて、今は朝昼で寒暖差が激しくなる秋の入り口まで来ていた。この時期は、彼岸花が咲き乱れていた。

あまり縁起のいいものとされない彼岸花だが、そんなこと思えなくなるくらい真っ赤な色が綺麗だった。

緑谷「そういえば彼岸花って、毒があるらしいね」

『え、そうなの？』

緑谷「うん。特に球根には人を死に追いやるほどの猛毒があるらしいよ」

『へぇ、知らなかった』

緑谷「でしょ。だから間違って食べたりしないようにね」

『出久くん、馬鹿にしてるでしょ。間違って食べるほど私は馬鹿じゃないからね？』

緑谷「ふふ、バレちゃった」

ニコニコと穏やかに笑う彼につられて笑ってしまう。つい許してしまうのだ。

『…、』

緑谷「どうしたの？…少し寒くなってきたね」

小さく身震いをした私に気づいて、そう言って彼は来ていた上着を私にかけてくれた。

『大丈夫だよ、出久くんが風邪引くでしょ？』

緑谷「その前にAちゃんが風邪引いちゃうでしょ？僕は大丈夫」

『……ありがとう』

彼の厚意に甘えることにした。

彼は優しい。優しすぎるがゆえ、こういった時に中々折れてくれない。

自分は大丈夫だから、とそう言って。

これはヒーロー業をやるせいか、はたまた元々の彼の気質なのかは分からなかった。

また風が吹いた。

『夏が終わるね』

緑谷「うん、そうだね」

この時期は夜が近づき、少し風が吹くだけで途端に寒く感じてしまう。

冬がもうそこまで近づいている、そんな気がした。

そう思ったことすら、何だか覚えがあって余計に身震いをしてしまった。

私はこの景色を、この景色に近い光景を夢で見た事があるのかもしれない。

そう思うことにした。