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あなたside
悲鳴嶼さんから聞いた話は確かに覚えがある話だった。
それは私が巫女となって二年が経った頃の話だった。
お館様に呼ばれて、ある地区の天候を変えて欲しいと言われた。
そこに向かえば、大雨で雷鳴が鳴り響いていた。これは鬼狩りするには不利な状況だとすぐに感じた。
その日は雨という予報ではなかったのに、お館様はそう確信して私に天候を変えるように言った。母からも聞いていたが、産屋敷家の人間には先見の明があり、その中でも今のお館様、耀哉様はそれが人一倍凄いという。
そして私は願った。
ここにいる人が無事に生きて帰れますように。
そして八年経って目の前に、その時生きて帰れた人がいる。
『…』
思わず涙が出そうになった。私の力が人の命を救ったのだと感じたから。
もちろん悲鳴嶼さんが強かったということもある。だけど彼はこう言ったのだ、
天候が変わったおかげであの時生き残れた、と。
「本当に感謝している。ありがとう」
『ご無事で良かったです』
「きっと他の者は信じない人もいるだろう。だが私はAが強いことを知っている。私のようにAに救われた人がいることをよく理解しておくように」
ジャラジャラと数珠を鳴らしてそう言った悲鳴嶼さんに、私は勝手にお館様のようだと思った。
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作者名:きりん | 作成日時:2021年4月5日 3時