一般人が柱に守られる！？ 漆

彼女の優しさ ページ32

あなたside




蟲「Aさん、伊黒さんから聞きましたよ」



笑顔なんだけどピキピキと頬がつり上がっているしのぶ様。



正直言って怖い。この笑みを他人に向けられていることは見たことあるが、実際私に向けられたことは無いので、しのぶ様の怖い笑みを真正面から見るのは初めてだ。



なんて、今の状況で考えてはいけなかったようで…



蟲「Aさん？聞いていらっしゃいますか？」



『…は、はいっ』



笑みがより一層、黒くなった。



蟲「分かっていますか？あなたは鬼に狙われると何度も言いましたよね？いくら話していたからと言って夜まで帰ってこないなんて…私の気持ちにもなってくださいっ…」



しのぶ様が、こんなふうに…必死に訴えかける姿を見るのは初めてでどうすればいいか分からない。



蟲「リングを大切にされているのは分かりますっ。でもあなたの命よりも大切なものはないのです。お願いだから…自分の命を大切にして」



今にも泣きそうなしのぶ様。



『しのぶ、さま』



そんなしのぶ様に私は抱きついてしまった。



『ごめん、なさいっ…』



こんなふうに、彼女を傷つけてしまうのは何度目だろう。傷つけられた側はもちろん、傷つけた側もこんなにも傷つくことが分かった。



彼女の気持ちがとてもよく分かって、苦しくなる。



もし、だって彼女が私と同じことをしたのならきっと止めるはずだから。辞めて欲しいと言うはずだから。



蟲「いいえ、いいんですよ」



そんな私を優しい言葉と手つきで抱きしめてくれた。

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