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強引に手を引かれ、そのままAと強制的に別れさせられ、俺らしか通らない路地まで連れてこられた。
俺は握られていた手を振りほどき、樹音を睨んだ。
『何すんだよ…！折角一緒に帰れてたのに……』
「約束破ったのはどっちだよ｣
そう言う樹音の顔はいつもと違った。
怒ったような、どこか不満があるような、そんな顔だった。
声色も、いつもより違う。こう、低く、脳に訴えかけてくるような声。
怖い。
『……はぁ、？そもそも約束とか別に……』
「言葉にしなくなっただけで、約束は約束でしょ。何勘違いしてんの？｣
いつもより口調が荒々しい樹音に、少し恐怖を覚え、自分が感じているこの不快感を押し殺すことにした。
『…そうだけどさ……、』
そう俯き加減に言うと、樹音は声色を優しく変えた。
もう、元に戻ってくれた？
｢予定あるなら先に言ってよ。
……それないと俺、置いてかれたみたいで悲しいし｣
次は樹音が俯き加減に俺の服をつまみながら言ってくる。
そんな樹音に、同情してしまった。
Aと俺みたいな、恋愛が混じった友達関係とは別の、普通の友達としての関係の樹音でもこう思っちゃうんだ。
Aが今の俺の立場だったら、俺は相当悲しむだろうし、怒るだろう。
それだったら、樹音がこうなっちゃうのもおかしくないな。
『……まぁ、ごめん。…次から気を付ける』
「うん、そうして｣
そしてさっきまでAと繋いでいた手を握ってくる樹音。
ああ、折角Aと繋いだ手なのになぁ。もったいない。
そんなこと言うわけにもいかないから、俺は黙って手を握り返した。
そのまま2人でマンションまで行って、いつもの通り部屋で別れた。
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作者名：鯖の味噌煮ちゃん | 作成日時：2024年3月3日 22時
