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『……帰ってる』
今日は先に帰るとか、用事あるとか何も聞いてない筈。なのに、壮大のクラスに壮大の姿はなかった。
もしかしてと思って、生徒玄関に行って壮大の靴があるかを確認したら、案の定無かった。
『……誰だよ。
………もしかして……………………』
大きなため息をつく。
そして群がってくる女子生徒達。
はぁ、今はそういう気分じゃないんだけど。
「樹音く……あれ、今日は壮大くん居ないの？」
『うん。帰っちゃったみたい』
「えぇ、そっか〜…。
じゃあさ、私と帰らない？」
「いーや、私と帰ろ！ね！」
「樹音先輩、私と帰りましょうよ」
あーもう面倒臭い。
なんで壮大じゃなくて好きでもない女子生徒に近付かれてベタベタ触られて付き纏われなきゃいけないんだ。
『ごめん。ちょっと今日急がなきゃだからさ、また今度ね』
そう言い、直ぐにその場を後にする。
後ろからは、女子生徒達が「えー」と残念がる声が聞こえてくる。
俺の優先順位で壮大が一位にならない時があるわけないだろ？
＿＿今急いで帰ったら壮大に会えるかな？
そんな事を思っちゃったもんだから、俺の脚はいつもより早く動いた。
＿＿。
＿＿＿＿＿＿＿＿は？
目の前の光景は、もう予想してた。
けど、その光景を目の当たりにするのは、やっぱり俺にはきつかった。
『……そんな感じはしてたけどさぁ…』
壮大があの女の手を握って、2人一緒に帰っている。
あーーーほんっとムカつく。
壮大の手を握ってる女も、女の手を握ってる壮大もムカつく。
まぁでもどうせ、壮大からじゃなくて女の方から握ろうだのなんだの言って握ったんだろ。
『……どうしようかな』
家に帰って壮大に直接聞き出したり、それなりの事したりするのも全然良いけど、それして壮大から嫌われたくは無い。
だがここは、あえて嫌われるか嫌われないかわからないゾーンを踏んで、壮大が俺だけを考えてくれるようにしよう。
そう思い、壮大とその女の歩く後ろを、早歩きで追った。
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作者名：鯖の味噌煮ちゃん | 作成日時：2024年3月3日 22時
