五十三 ページ23
翔side
俺にはわからないことが一つあった。
翔「あの時、雅紀はどこに行っていた？
俺の別荘で、車もないのに…」
雅紀が俺の電話を無視してまで、どこに行っていたのか、俺には理解し難いことだった。
雅紀の顔は少し歪んだ。
智「…俺と会ってたんだよ。」
その時、意外な人物がそう言った。
翔「…そんなの、計画の中にはなかった。
雅紀と、何を話したんだ。」
智くんは真っ直ぐ俺を見た。
雅紀「…翔ちゃんのことだよ。
あの時、翔ちゃん焦ってた。
それを察した大野さんが、俺に電話をしてきたの。」
雅紀の言葉に違和感を覚えた。
確かにあの時は焦っていた。
雅紀を守りたい一心で、
でも俺は計画を壊すほどの焦りはなかったはずだ。
智「…心配だったの。
相葉ちゃんのことを考えすぎるからこそ、翔ちゃんの心が…」
翔「…え？」
わからなかった…
智くんの言葉の意味が…
何故俺の事を…？
智くんが言ったんじゃないか
雅紀の心のケアをしろって
俺の親父のように、絶対死なせるなって
智くんがそう…
智「翔ちゃんが、色々思い出して
変な方向に走ってしまわないか
自分を犠牲にしてまで、相葉ちゃんを守ろうとするんじゃないかって…」
涙が溢れた。
全部、見透かされていた。
雅紀の心が救われるなら、俺はどんなことでもしようと心に決めていた。
でも…
翔「…救われてたのは、俺の方だったってことか。」
雅紀「…大野さんに翔ちゃんのことは聞いた。
親父さんのこと…
いつも俺の事守ってくれてたのは、そういう理由があったからだったんだね…。
ごめんね
気づいてあげられなくて…
俺ばっか守ってもらって…」
雅紀はゆっくり近づいてきて、俺を強く抱き締めた。
ここ最近、上手く泣けなかった。
でも…
今の俺の瞳からは、ボロボロと涙が溢れ出る。
本当は、誰かに助けて欲しかったのかもしれない。
雅紀「…ごめんね
ごめんね翔ちゃん…
こんなに近くにいたのに…」
俺は雅紀の言葉に首を何度も横に振った。
俺は救われてた。
辛かったはずなのに、俺の前では笑顔でいてくれて
ずっと傍にいてくれた…
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作者名：haru | 作成日時：2020年7月3日 22時
