五十一 ページ21
和也side
俺はあの時、たまたま潤くんと大野さんが一緒にいるところを見かけた。
普通に話してたから、俺も気に止めることもなく通り過ぎようとした。
でも潤くんが突然、大野さんに殴りかかったんだ。
和也「っ…？」
俺は物陰に隠れて、2人の様子を見ていた。
助けなきゃって何度も思った。
でも、体が動かなかった…。
その時ほど、自分が役立たずと思ったことはない。
でと潤くんが大野さんに暴力を奮うのに対して、大野さんは抵抗する素振りは一切なかった。
ただ、されるがままだった…
俺は自分の過去と重ねた。
親父に殴られてた時…
いくらでも抵抗はできたはずなんだ…
俺だって一応男だし、
逃げることだって…
でも…
大好きだったから…
いくら暴力を奮われたって、父子家庭だった俺の、唯一の家族だったから…
知ってるから…
親父は本当は優しいってこと…
だから抵抗できなかった
誤って殺してしまった時は、涙が出たんだ。
もう、一緒にいられないんだって
そう思った。
でも…だからこそ
最後くらいは親父のこと、守りたかった…
虐待を受けていたこと、誰にも言えなかった。
智「和…？
大丈夫？」
大野さんに声をかけられ、我に返る。
和也「…大丈夫。
続けて。」
俺はあの時、2人の間に何があったのかはわからなかったけど
大野さんが潤くんを想っていることだけはわかった。
だから大野さんは、潤くんに手を出さなかったんだって…。
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作者名：haru | 作成日時：2020年7月3日 22時
